最新記事

ドイツ

新型コロナ重症患者を安楽死させた医師が逮捕 ドイツ

2020年11月25日(水)18時50分
モーゲンスタン陽子

ドイツでは、安楽死は非常に繊細な話題とされている...... (写真は関係がありません) chayakorn lotongkum-iStock

<ドイツで、薬物によって2人の新型コロナ重症患者を安楽死させた容疑で44歳の主治医が逮捕、殺人罪で起訴された......>

ドイツのエッセン大学病院で今月、薬物によって2人の新型コロナ重症患者を安楽死させた容疑で44歳の主治医が逮捕、殺人罪で起訴された。市民のあいだにショックが広まっている。

医師の素性に疑念も

医師は今月13日と17日、新型コロナ病棟の47歳のオランダ人男性と50歳の男性に「苦しみから救うため」大量の薬剤を投与したと言われている。2人の死に疑念を抱いた病院側が警察に通報、医師は18日に逮捕された。現在医師は2件中1件のみを認め、情報を提供したという。患者と家族の痛みと苦しみを終えたかったと供述している。

WDR(西ドイツ放送)によると、医師は今年2月に採用され、数回の個人面談のあと新型コロナ病棟勤務となった。当病院で麻酔科医として勤務する以前は心臓外科医として別の病院に勤めていたが、同僚へのセクハラ疑惑で転院を余儀なくされたという。また、精神的な不安定さも長年知られていたようだ。

エッセン大学病院は23日の声明で遺族への追悼を述べるとともに非常な衝撃を受けていると表明、警察の捜査に全面的に協力すると明言した。

医師の独断では不可

第二次世界大戦中に薬剤による大量虐殺の歴史のあるドイツでは、安楽死は非常に繊細な話題とされている。2015年に採決されたドイツ刑法217条により自殺や安楽死などいかなる死の幇助も一旦禁止されたが、昨年よりふたたび、状況により許可されるようになっていた。

だが、通常これは一医師の独断ではなくチームとして判断されるものであり、また患者への十分な情報提供、セカンドオピニオンの考慮など、さまざまな手順が必要とされる。しかしながら本件の2名の患者は重症であり、合意のための対話が行われることはなかった。

弁護団は現在、同院でこの医師と関連付けられるケースが他にもなかったかどうか調査を進めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

10月スーパー販売額2.7%増、節約志向強まる=チ

ビジネス

中国、消費促進へ新計画 ペット・アニメなど重点分野

ワールド

米の州司法長官、AI州法の阻止に反対 連邦議会へ書

ビジネス

7-9月期GDPギャップ3期ぶりマイナス、需要不足
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中