最新記事

少数民族

中国政府、少数民族弾圧はウイグルに留まらず 朝鮮族の学校からハングルを抹消へ

2020年11月24日(火)21時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

少数ながら韓国国内にも中国国籍の朝鮮族の人びとがいる。彼らも今回の中国の暴挙に抗議デモを行った。NTD Korea / YouTube

<ウイグル族、モンゴル族に続いて朝鮮族も習近平の圧政に苦しめられて──>

近年、中国当局が新疆ウイグル自治区のウイグル族に対し、強制避妊や強制労働をさせていたことが報告され、世界から批判の声があがっている。

また、ウイグル族に対する学校での授業を強制的に中国語に変更させる「言語の同化政策」が進められ、最近ではウイグル族のウイグル語だけでなく、内モンゴル自治区でも学校教育でモンゴル語の使用も大幅に減らされているという。

そして今、この対象が中国にいる朝鮮族にも拡大されている。

中国に存在する少数民族は、1億2000万人といわれ、これは中国の全体人口(約14億人)の8.5%である。2019年の人口調査によれば、中国には五十五の代表的少数民族があり、人口数は、ウイグル族が1007万名、モンゴル族は598万人。そして朝鮮族は183万人だといわれている。

「朝鮮族」と呼ばれる人々は、中国の国籍をもちながら、戸籍の民族欄には「朝鮮」と記載されている人たちのことである。

筆者が学生のころ、大阪のバイト先で朝鮮族の女の子と一緒に働いていたことがある。朝鮮族は吉林州の延辺に多いと聞くが、彼女も延辺出身だった。

彼女の話す朝鮮語は韓国語とイントネーションの違いはもちろん、単語も少しずつ違いがあって興味深かったことを覚えている。

そんな朝鮮族の人たちから言葉が奪われるとは、具体的のどのようなことが行われているのだろうか?

中国は2010年ごろから少数民族に対し、中国語強化政策を開始している。今年、延辺にある朝鮮族学校では、9月からの新学期より、中国教育庁が作った統一教科書の使用が義務化された。

教科書そして試験からハングルを追放へ

すべての教科ではなく、まずは中国語文/歴史/政治(日本でいう公民)の科目を、中国の学生と同じ中国語の教科書で教えるという。これらの教科は、これまでハングルで書かれた教科書と朝鮮語を話す先生によって行われてきた。

この変更は、まず高校1年から開始され、来年から高校のその他の学年と、小中学校でも実施が予定されている。加えて2023年からは、これまで少数民族に対して行われてきた入試の特別加算点制度を廃止し、さらに、今回教科書変更が行われた科目、中国語文/歴史/政治については、すべて中国語で試験を受けなくてはならないことが発表された。

高校1年生から教科書の変更が開始されたのは、この入試システム変更のためだろう。しかし、いくら3年間中国語の教科書で勉強したからといって、中国語ネイティブの生徒たちと競うとなると点数の差は出てしまうのではないだろうか。

そうなってくると、子をもつ親としては将来の入試を考え、朝鮮語よりも中国語教育を優先させるようになる。それは、将来的に民族の文化である言語を守っていこうという気持ちが薄れていくことに繋がっていくのではないかと心配されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、選挙での共和党不振「政府閉鎖が一因」

ワールド

プーチン氏、核実験再開の提案起草を指示 トランプ氏

ビジネス

米ADP民間雇用、10月は4.2万人増 大幅に回復

ワールド

UPS貨物機墜落事故、死者9人に 空港は一部除き再
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 5
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 6
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 7
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    中国の大豆ボイコットでトランプ関税大幅に譲歩、戦…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中