最新記事

中東情勢

ネタニヤフとムハンマド会談、事実とすれば中東は変わる

Saudi Arabia Denies MBS Secretly Met Israeli Officials During Pompeo Visit

2020年11月24日(火)18時45分
デービッド・ブレナン

トランプ政権の国務長官として最後のサウジ訪問をしたポンペオ (左)。ここにイスラエルのネタニヤフも加わったと報道された(サウジは否定) Bandar Algaloud/Courtesy of Saudi Royal Court/REUTERS

<アラブの盟主サウジアラビアは、イスラエルのネタニヤフ首相の訪問を否定しているが、湾岸諸国にはパレスチナ人の土地をイスラエルから取り戻すよりイスラエルと協力してイランに対抗することを重視する雰囲気になっている>

サウジアラビアの外相は、高齢のサルマン現国王を支える陰の実力者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が、同国を訪問中の米国務長官マイク・ポンペオとともにイスラエル当局と会談したという報道を否定した。

ポンペオは、首都リヤドで開催されたG20サミットに出席するためにサウジアラビアを訪れている。この訪問は、ポンペオの国務長官としての最後の旅だと広く認識された10日間の中東・ヨーロッパ歴訪の日程に組み込まれていた。

ポンペオはサウジアラビア入りする前に、イスラエルを訪問していた。その目的は、米大統領ドナルド・トランプと、イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフが推し進めたイスラエル寄りの政策の功績を祝うことだ。

今回の歴訪にはまた、アブラハム合意を不動のものとするのが狙いもある。2020年夏に締結されたアブラハム合意は、アラブ首長国連邦ならびにバーレーンとイスラエルの国交正常化を決めた歴史的合意だ。湾岸地域の他の君主国もまもなくそれに追随すると見られるが、なかでも最も重要な国がサウジアラビアだ。

サウジアラビアとイスラエルは長年、政治と諜報で協力してきたが、正式な外交関係は結んでいない。

イスラエルのメディアは11月23日、ネタニヤフがサウジアラビアを訪問し、ムハンマド皇太子ならびにポンペオと会談したと報じた。イスラエルの教育相ヨアブ・ギャラントは同日、軍が運営するアーミー・ラジオに出演して、ネタニヤフの訪問を認める発言をした。「会談が実現したという事実と、それがこうして不完全ながらも公表されたことは、きわめて重大な意味を持つ」

会談が本当なら歴史的事件

イスラエルのハアレツ紙とニュースサイト「ワラ」が報じたところによると、会談にはイスラエル諜報機関モサドの長官ヨシ・コーヘンも同席した。

するとイスラエル国防相で、2021年に首相就任が決まっているベニー・ガンツ(与野党連立の条件としてネタニヤフとの首相輪番制が合意されている)は、「我が国の首相がサウジアラビアを極秘訪問した情報を漏らすのは無責任な行為だ」と批判した。

サウジアラビア外相のファイサル・ビン・ファルハンはイスラエル側の報道を否定し、次のようにツイートした。「ポンペオ米国務長官による今回の訪問中に、ムハンマド皇太子とイスラエル当局が会談したと報じられているようだが、そのような会談は行われていない。同席したのは、アメリカとサウジアラビアの関係者だけだった」

会談が本当に行われたのだとすれば、イスラエルとサウジアラビアの首脳会談としては初となる。イスラエルとアラブ諸国の緊張緩和が遅々として進まないなかでは、きわめて重要な出来事だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中