最新記事

バイデンのアメリカ

党内左派の人事でバイデンの力量が試される、「妥協はバイデンの持ち味」

BIDEN’S FIRST 100 DAYS

2020年11月20日(金)06時45分
スティーブ・フリース

magSR20201120bidensfirst100days-B-3.jpg

バイデン勝利に喜びの声を上げたドイツのメルケル首相 TOBIAS SCHWARZ-REUTERS

共和党は反発するだろう。彼らはバラク・オバマ前大統領の多くの大統領令にも抵抗した。だが民主党は、トランプはオバマよりもさらに大統領令の限界を押し広げたと指摘する。実際、トランプの大統領令には合法性が怪しいものもある。

だがバイデンは、その一部を今後も維持するかもしれない。その1つが、保険会社に対して、既往症のある人が加入する権利の保護を求めた9月の大統領令だ。

連邦最高裁(保守派の判事が過半数を占める)が、11月10日から開始した審理で国民皆保険オバマケアを違憲と判断した場合、バイデンがトランプのこの大統領令を持ち出す可能性はある。「トランプの大統領令を使って主張を展開すれば、共和党としては反対しにくくなる」と、ある政権移行チーム関係者は言う。

「この国が直面する大きな難題に対処するために必要なら、バイデンはあらゆる大統領権限を利用するだろう」と民主党重鎮のダシュルは言う。「彼は法にのっとり、議会と連携して仕事を進めることを好むが、必要に迫られれば独断でも動くかもしれない」

またバイデンは、副大統領として世界各地を回ってきただけでなく、上院外交委員会の委員長を務めた経験もある。外交分野での豊富な経験と、世界の多くの指導者との個人的なつながりは、大統領としての大きな強みになるだろう。

実際、バイデン勝利が報道されるとすぐに、トランプからの頻繁な非難に神経を擦り減らせてきた同盟諸国は喜びの声を上げた。

同盟国の信頼を回復する

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は「大西洋を越えたわれわれの友情は極めて重要だ」とツイート。NATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長も「バイデンはNATOを強く支持しており、彼と緊密に協力するのが楽しみだ」と投稿した。

政権移行チームの関係者は、公式声明や一部対外支援の復活、トランプ時代の移民規制の撤回を通して、本気で国際社会との関係修復に乗り出す意思を示したい考えだ。

しかしジョージ・W・ブッシュとオバマ、2人の大統領の顧問を務めた経験を持つエリッサ・スロトキンは、バイデンが大統領になっただけでは、トランプ時代の傷を癒やすことはできないと指摘する。

「選挙結果がトランプ主義の明確な否定を意味するわけではない。バイデンが各国政府に対して『アメリカは4年間脱線していたが戻ってきた』と言うだけでは不十分だ」と、現在はミシガン州選出の民主党下院議員であるスロトキンは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中