ニュース速報
ワールド

アングル:ウクライナへの軍事支援、国防産業の強化に重点移行

2025年07月05日(土)08時57分

ドイツのウィースバーデンにある米軍基地「クレイ兵舎」はウクライナ人を含む31カ国から来た兵士約350人が有刺鉄線で囲まれた中にある格納庫や空調の効いた緑色のテントで活動している。2013年7月撮影(2025年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[ウィースバーデン(ドイツ) 2日 ロイター] - ドイツのウィースバーデンにある米軍基地「クレイ兵舎」はウクライナ人を含む31カ国から来た兵士約350人が有刺鉄線で囲まれた中にある格納庫や空調の効いた緑色のテントで活動している。

兵士たちの任務はロシアのウクライナ侵攻が長期化している状況で、北大西洋条約機構(NATO)と西側以外の支援国から提供を受けた兵器・装備・訓練に関するウクライナのニーズを満たすことだ。

NATOがこの基地にウクライナ支援を調整するための司令部を設置してから半年が経過し、ウクライナに対する支援が特にドローン製造について進化している。

2022年のロシア侵攻後、NATO加盟各国は主に自国の兵器備蓄を削ってウクライナに軍事支援を提供し、ウクライナは西側の防衛企業に大きく依存していた。

NATOのウクライナ安全保障支援・訓練部隊(NSATU)副司令官のマイク・ケラー少将はロイターに対し、軍事支援のあり方が今やウクライナの国防産業を強化する方向にますます移行していると語った。

ケラー少将はウクライナの創造性を称賛し、技術革新・生産・認証を巡る一連の過程のスピードを高く評価した。ドローン製造はNATO加盟国が製造方法を学び将来的にウクライナから購入する可能性もある分野だという。「防衛調達は一方通行でない。ウクライナから購入したいドローンが確かに多くある。ただ現時点で、ウクライナは自国で生産したドローンを全て必要としていると考える」と述べた。

NATO欧州連合軍副最高司令官のキース・ブラウント海軍大将も、西側は特にドローンのような自動操縦兵器に関してウクライナから多くを学べるだろうと語った。「われわれは自動操縦の能力について、いつでも未来のことだと考えていたが、現実には誰もが想像していたよりもたぶんかなり早く進化している」とロイターに語った。海上・水中・地上・空中のドローン活用について言及し「ウクライナがドローンの利用方法を学ぶだけでなく製造方法も学んでいる点は興味をそそる」と述べた。

<差し迫ったニーズ>

ウクライナに対する軍事支援は、欧州同盟国やカナダがロシアの軍事的野心を巡る懸念やトランプ米大統領の要求に対応し防衛費を増大させるようと準備しているのに伴って進化している。

ケラー少将はNATO加盟国が自国の兵器備蓄を増やすためにもウクライナ向けの兵器を製造する企業が必要になるだろうと述べた。ウクライナはあまり数多くの部隊を対ロシア戦争に引き留めずに領土を防衛するために防空システム、弾薬、対戦車地雷を現在最も必要としているという。

トランプ米政権は米国のウクライナ支援を巡る関与を疑問視しており、NSATUは米国に対する西側軍事支援の依存度を低める目的も一部あって設立された。

米国がウクライナ向けの兵器供与の一部停止を決定したためこうした懸念材料が浮き彫りになり、ウクライナが自国を防衛する能力について懸念が新たに生じている。

しかしながら、米国はNSATUの司令官とヴィースバーデンの人員の約9%を派遣している。

物資の大半はポーランドにあるNSATUの拠点を通じてウクライナに送られている。NATOによれば毎月1万8千トンを送り出し、ルーマニアに第2の拠点が建設されている。

ケラー少将はNSATUを経由する軍事支援が当面少なくとも安定的に続くと見込んでいるが、こうした状況はどのような政治的な判断がなされるかどうかで左右されると述べた。NSATUは米国が離脱した場合でもウクライナの抵抗を支えられるかどうかとの質問に対し、ケラー少将は「可能だ」と答えた。

しかしながら、ケラー少将はまたNSATUとして衛星画像を利用していないと明言しつつ、衛星監視のようなある種重要な能力を代替するよう「欧州とカナダが対応を迫られるのではないか」と警戒した。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ハマス、米停戦案に「前向き」回答 直ちに協議の用意

ワールド

米テキサス州の川氾濫、少なくとも24人死亡 女子向

ワールド

トランプ氏、12カ国への関税書簡を7日に送付 対象

ビジネス

焦点:航空機の納入遅れ、背景に高まる「特注高級シー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 10
    1000万人以上が医療保険を失う...トランプの「大きく…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中