最新記事

バイデンのアメリカ

党内左派の人事でバイデンの力量が試される、「妥協はバイデンの持ち味」

BIDEN’S FIRST 100 DAYS

2020年11月20日(金)06時45分
スティーブ・フリース

magSR20201120bidensfirst100days-B-2.jpg

閣僚候補とささやかれるステイシー・エイブラムス SHANNON STAPLETON-REUTERS

こうした人事をめぐる論争で「バイデンの力量が試される」と言うのは、ノースカロライナ大学の政治学者で政権移行のプロセスに助言する超党派のプロジェクトを主宰するテリー・サリバンだ。

「バイデンが妥協しようとするため、左派勢力はやきもきするだろう。妥協はバイデンの持ち味だ。バイデンが政策を実現するには妥協するしかない」

環境・移民政策も転換へ

大統領が政策を通すには別の方法もある。大統領令だ。近年の大統領全員がそうしてきたように、バイデンは大統領就任後、最初の数日間に大統領令を連発するだろう。トランプの出した大統領令を取り消すための大統領令も必要となる。

その中には、環境問題に関するさまざまな政策が含まれる。新規の石油・ガス掘削事業にメタンガスの排出規制を課す、連邦政府の調達制度に関してはクリーンエネルギーの使用と排ガスゼロ車の購入を優先させる、北極圏国立野生生物保護区をはじめとする連邦政府の所有地を新規の石油・ガス探査の対象から除外する、上場企業に対して工場などでの温室効果ガス排出データの公表を義務付ける、などだ。

新型コロナウイルス対策では、バイデン陣営はWHO(世界保健機関)への復帰、全ての連邦施設でのマスク着用の義務化、国防生産法を発動して医療従事者向けの個人用防護具の量産を要請するなどの大統領令が予想される。

さらに、イスラム諸国からの入国を禁じて物議を醸したトランプの「ムスリム禁止令」を撤廃し、抑圧や迫害から逃れてきた外国人の難民認定申請に関する政府の手続きを迅速化して拡大する大統領令の草案作りも進められていると、政権移行チームの関係者らは明かした。

トランプは大統領に就任して最初の1カ月で難民受け入れ人数の上限を5万人までに設定し、今年に入ってからは近年で最低レベルの1万8000人に制限している。

さらに政権移行チームは、テロを実行する恐れがある人物の搭乗禁止・監視リストに関するシステムを見直して、こうしたリストの作成をより透明化する大統領令について検討し、確認方法の簡便化に取り組んでいくとみられている。

また幼少時に親に連れられて不法入国した「ドリーマー」と呼ばれる人々を以前のように強制送還しない方針に戻す取り組みも行われるはずだ。

バイデンのチームはまた、ウォーレンが1月にオンライン誌「ミディアム」への寄稿で行った提案を検証している。大統領は議会に諮らずとも学生ローンの大部分を帳消しにできるという提案だ。

教育長官に学生への融資権限を与えているのと同じ法律で、その返済義務を帳消しにすることも軽減することもできると、民主党左派は論じている。学生ローンの返済に苦しむ若者たちの救済は経済の再建に直結すると考えるからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる

ビジネス

訂正-米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中