最新記事

香港

【香港人の今1】「攬炒(死なばもろとも)」を世界に知らしめた・27歳国際工作組織創設者

RISING LIKE A PHOENIX

2020年11月26日(木)19時25分
ビオラ・カン(文)、チャン・ロンヘイ(写真)、雨宮透貴(写真)

国際工作組織「攬炒チーム」創設者 劉祖廸(27) PHOTOGRAPH BY YUKITAKA AMEMIYA

<香港の状況は絶望的に悪化している。11月23日には民主活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)、周庭(アグネス・チョウ)らが収監された。だが、香港人の目に現状はただの暗闇とは映らない。彼ら香港人は今、何を思い、どう反抗しているのか。16人の本音と素顔を伝える(1)>

昨年6月に逃亡犯条例改正案への大規模デモが始まって以来、今年10月末までに香港では1万144人が逮捕され、2285人が起訴された。今年6月末には香港国家安全維持法が施行。状況は絶望的に悪化しているが、香港人の目に現状はただの暗闇とは映らない。

そのキーワードが「攬炒」(ランチャオ、「死なばもろとも」の意味の広東語)だ。反政府派の香港人は、たとえそれが香港にとって損だとしても、中国政府への制裁を国際社会に呼び掛ける。

香港の「滅び」で中国政府が譲歩し、その結果、香港がこの窮地を破って鳳凰のように火の中で生まれ変わることを願う。

7月1日、香港の道端に「我哋真係好撚鍾意香港(ウチらは香港がクッソ好きだ)」と書かれた黒い旗が現れた。いつも理屈っぽく、クールな香港人がようやく「この街への愛」を言葉にした。

希望があるから反抗し続けているのではなく、反抗し続けないと希望がない――そう信じる香港人の今を追う。

国際工作組織「攬炒チーム」創設者 劉祖廸(27)

昨年6月、香港政府と中国政府を「攬炒」する可能性を示唆した香港のネットユーザー「我要攬炒」の書き込みが注目を集めた。その後わずか1年で、このネットユーザーは「攬炒」を香港抗議活動の理念として広め、世界にも知らしめた。

香港国家安全維持法の施行から3カ月後、「我要攬炒」こと劉祖廸(フィン・ラウ)は身分を明らかにし、新たな闘いを始めた。

「攬炒(ランチャオ)」とは「共に滅びる」を意味する広東語だ。だが、劉は単に滅びるだけではなく、香港がその国際的な経済的地位を犠牲にしても、鳳凰のように火の中で生まれ変わることを求めている。

彼と彼のチームはこの考えの下、各国香港のデモを組織し、世界の主要紙に香港支援広告を一斉に出し、欧米や日本の国会議員を説得し、香港官僚への経済制裁を促した。

劉の語調は穏やかだ。今はイギリスにいるが、それでも安全は脅かされる。100万香港ドルの報酬で誰かに命を狙われ、見知らぬ人に頭を殴られ重傷を負った。遺書も用意している。

「『攬炒』はすでにみんなの血となり肉となった。僕が消されても、誰かがこの意志を継いでくれるはずだ」

彼はこうも言う。「かつて香港人は政治に関心を持たず、若者も中国のトレンドに乗る最悪の状況だった。香港人意識が最高に高まった今は最良の時代だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イーライリリーの経口肥満症薬、2型糖尿病患者で体重

ビジネス

積極利下げの用意、経済の下振れ顕在化なら=マン英中

ビジネス

スズキ、EV強化へ80億ドル投資 インドの生産体制

ワールド

米政府、防衛関連企業への出資を模索する可能性=商務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 7
    「ありがとう」は、なぜ便利な日本語なのか?...「言…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    トランプ、ウクライナのパイプライン攻撃に激怒...和…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中