最新記事

香港

【香港人の今2】「殴り殺す」と警察に脅された友人が、台湾密航に失敗した・20歳勇武派

RISING LIKE A PHOENIX

2020年11月26日(木)19時30分
ビオラ・カン(文)、チャン・ロンヘイ(写真)

勇武派の抗議者 Edward(20) PHOTOGRAPH BY CHAN LONG HEI

<香港の状況は絶望的に悪化している。11月23日には民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)らが収監された。香港人は今、何を思い、どう反抗しているのか。16人の本音と素顔を伝える(2)>

勇武派の抗議者 Edward(20)

2014年の雨傘運動の時、まだ中学2年生だった。その年の9月、香港警察が近年の民主化デモでは初めて催涙ガスを使用した日に先輩と現場で催涙ガスを浴び、そこから社会運動への関心が芽生えた。

5年後の2019年、平和なデモから道路封鎖や火炎瓶投げまで、あらゆることをした。先日、台湾への密航失敗で中国に拘留された香港人12人のうちの1人も仲間だ。

昨年10月、この友人は抗議活動で逮捕され、拘留中に警官から「殴り殺す」と脅された。保釈後、音信不通となった友人から連絡が来た。「(密航の)船に乗る前は電話してこないようにと言われた。もし3日後に連絡が来なければ成功したと」

しかし友人は12人の中で数少ない10代の逮捕者になった。

「瓦全(がぜん)で生き延びるより、玉砕したほうがいい」──抗議活動の先頭で戦う勇武派の信念である。

とはいえ勢いだけでなく、事前に配置や行動、目標について綿密に打ち合わせする。目の前で警察官が実弾を発射しても怖くないが、仲間の安否が唯一の心配事だ。

「友人がいきなり姿を消し、逮捕され、逃亡し、亡くなる......。背負ったものが多過ぎて後戻りできないが、前へ進むしかない」。生き抜いた今、生きる意味と責任を語る。

magHK20201126-2-2.jpg

漫画家 阿塗(38) PHOTOGRAPH BY CHAN LONG HEI

漫画家 阿塗(38)

時事漫画を執筆して8年。香港国家安全維持法が施行された途端、阿塗(ア・トー)は新聞や雑誌関係の仕事がなくなった。作品が時代のネガティブな面を風刺するものだからだ。

これまで社会の現状をテーマに、広東語の話し言葉で漫画を描き続けてきた。読者の多くは香港が大好きな香港人──彼自身も同じだ。「香港という街が大好き。この街の自由があるから、今の僕がいる」

しかし同法の施行後、約1年間コラムを連載してきた「明報週刊」がリニューアル名目で阿塗を含む政治風刺画家4人のコラムを打ち切った。6年間も連載したヤフー香港も阿塗ら7人のコラムを終了。作品の発表先がなくなった彼は、新作をSNSで有料公開して窮地を打開した。

街の息遣いも生活の雰囲気も阿塗の創作に欠かせない。香港を離れることなく、最も近い視点からこの街を描きたい。

「料理と同様、いつも強火を使う必要はない。弱火でじっくり煮込んでもおいしく仕上げられる。大事なのはその火種が残ること。そしていつでも派手に再燃できること」

ユーモアのある比喩に秘めた知恵は、暗闇を導くともしびのように、絶望の中にいる人々を希望へといざなう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英アンドルー元王子を逮捕 エプスタイン氏巡る不正行

ビジネス

アイルランドの法人税収、多国籍企業3社が約半分占め

ワールド

トルコの和平工程表承認、PKK関係者が「重要な一歩

ビジネス

ラガルドECB総裁、職務に専念と同僚らに伝達 即時
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 2
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 3
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 4
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 5
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 6
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 7
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 8
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 9
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 10
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中