最新記事

2020米大統領選

主戦場ペンシルベニアを制するのはトランプか、バイデンか

Inside the Fight for Pennsylvania

2020年10月20日(火)19時20分
スティーブ・フリース

ペンシルベニアでの選挙集会で聴衆に向かってマスクを投げるトランプ(10月) JONATHAN ERNST-REUTERS

<今年の大統領選で「最重要州」と見なされるペンシルベニア州──人口動態や産業構成から見てもアメリカを象徴するこの州に懸ける両陣営の本気度は>

それは忘れたくても忘れられない悪夢。民主党大統領候補ジョー・バイデンとその陣営はこの夏、何度もその悪夢にうなされたはずだ。4年前(建国240周年の節目の年だった)の11月、事前の世論調査で一貫してリードしていた民主党の大統領候補ヒラリー・クリントンは、建国の地ペンシルベニア州の投票で1ポイントに満たない僅差で敗れ、当てにしていた選挙人20人をそっくり失い、共和党候補ドナルド・トランプに大統領の座を奪われたのだった。

同じ失敗は許されない。政策で負けるはずはないから、問題は戦術だ。新型コロナウイルスの感染爆発を受けて、バイデン陣営はリアルな(人と人との接触を伴う)選挙運動を「自粛」していた。しかし新型コロナを「ただの風邪」と見なすトランプ陣営は4年前の成功体験をなぞるように、リアルで派手な選挙集会を続けていた。運動員もリスクを覚悟で何百万軒もの戸別訪問を行っていた。

だから秋が来ると、バイデン陣営は戦術を変えた。候補者自身が先頭に立ってペンシルベニア州の各地に出向き、有権者に顔を見せ、語り掛けるようになった。

この戦術転換を促したのは、9月26日にABCニュースとワシントン・ポスト紙が発表した共同世論調査の結果だ。バイデンのリードは10ポイントあったが、「とても熱心」に支持する人は51%のみ。対するトランプには「とても熱心」な支持者が71%もいた。「これで非常ベルが鳴り響いた」と陣営幹部は言う。

「ペンシルベニアは絶対に落とせない」と、この人物は本誌に語った。「(勝つためには)あらゆる手を使う。たぶん勝てると思っているが、もしもここで負けたら、一巻の終わりだ」

なぜか。単純に数字だけ見ても、ペンシルベニアの票は全米レベルの勝敗を大きく左右する。大統領選では一般投票を州ごとに集計し、州の人口(具体的には連邦議会に送り出す議員数)に応じて割り振られた選挙人を選ぶ。ペンシルベニア(20人)を含め、ほとんどの州では1票でも多かったほうが州の選挙人を総取りする。選挙人は全体で538人なので、合算して過半数の270人以上を獲得した候補が勝者となる。

そしてペンシルベニアでは民主・共和両党の支持率が拮抗している。だから大方の予想では、ペンシルベニアが今年の大統領選の「最重要州」と見なされている。一説によれば、トランプがペンシルベニアを制すれば再選の可能性は84%、バイデンが制すれば初当選の確率は96%だ。

国の運命が決まる戦い

人口動態や産業構成で見ても、ペンシルベニアはアメリカ社会全体を象徴している。この州では非大卒・非ヒスパニックの白人有権者(州の中心部に多い)と、大卒で人種的にも多様な有権者(大都市とその郊外部に多い)がほぼ拮抗している。ハイテク、バイオなどの先端産業もあれば鉄鋼やエネルギーなどの伝統産業もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、温室効果ガス40年に90%削減を提案 クレジ

ビジネス

物価下振れリスク、ECBは支援的な政策スタンスを=

ビジネス

テスラ中国製EV販売、6月は前年比0.8%増 9カ

ビジネス

現在協議中、大統領の発言一つ一つにコメントしない=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中