最新記事

日本政治

菅義偉、政権の大番頭から頂点へ 問われる宰相の力量

2020年9月4日(金)12時23分

安倍晋三首相(65)の右腕として戦後最長の政権を支えてきた菅義偉官房長官(71)が、次期総理の座を手にする最短距離に浮上してきた。写真は国会の議場内で話す安倍首相(左)と菅官房長官。2014年2月、東京で撮影(2020年 ロイター/Yuya Shino)

安倍晋三首相(65)の右腕として戦後最長の政権を支えてきた菅義偉官房長官(71)が、次期総理の座を手にする最短距離に浮上してきた。

幾多の難題を巧みにさばいてきた政治手腕、官僚組織への強いにらみ、冷静な物言いからうかがえる安定感。どれをとっても政権の大番頭として高い評価を集めてきた菅氏だが、日本を率いる宰相としての思想性や政治スタンスは明確な輪郭がつかみにくい。

禁欲さで知られるたたき上げの政治家はどのように権力への階段を上り、安倍後継の重責に挑もうとしているのか。

二階氏とのたたき上げの絆

安倍首相が突然の辞意を表明する約1週間前の8月20日夜、菅長官は、都内のホテルのVIP用個室で、自民党の二階俊博幹事長(81)と会っていた。ともに有力政治家の秘書から地方議員へと、たたき上げの苦労を重ねた経歴を持つ2人は、「お互いに、親分にはかわいがってもらったな」と昔話に花を咲かせた。

この席に唯一、加わった政治評論家の篠原文也氏はこの会食について、二階氏が「菅さんとの関係を重視しているということを外向けに知らしめる、また菅さん本人に対して、あなたを大事にしているんだぞ、ということをわからせる。そういう意味があった」と話す。2人は6月と7月にも会食していたという。

二階氏は安倍首相の後任を選ぶ自民党総裁選に向け、早々と菅氏への支持を表明した。二階氏と菅氏は、安倍首相を始めとする世襲議員とは違い、親の七光りがない党人政治家として共通項を持つ。党を牛耳る幹事長である二階氏の強い後ろ盾を受け、菅氏は首相後継の有力候補と見られていた岸田文雄党政調会長、地方党員の支持でトップに立つ石破茂元幹事長に大きく水をあけ、14日に行われる総裁選挙での勝利が確実視されている。

篠原氏によると、会食の中で菅氏は「二階さんが幹事長として党内をきちんとグリップ(統率)してくれている。そのおかげで今の政権(運営)が非常にやりやすい」と二階氏を持ち上げた。政権運営について、政府と自民党がそれぞれの立場から協力しあう関係を確認するような雰囲気だった、と篠原氏は振り返る。

ゼロからの政治家スタート

総裁選出馬を表明した2日の会見で、菅氏は約7年8カ月にわたって安倍首相とともに進めてきたアベノミクスなど基本政策の継承を表明。独自の路線を示すことなく、安倍氏の後継者としての姿勢を鮮明にした。

そして、菅氏は「私の原点について、少しだけお話をさせていただきたい」と、秋田県の農家に生まれた生い立ちを話し始めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中