最新記事

独占インタビュー

イアン・ブレマーが説く「協調なき時代」に起きた米中対立の行方

LIVING IN THE GZERO WORLD

2020年9月24日(木)13時00分
ニューズウィーク日本版編集部

「第2次大戦後の団結が問題の核心に目を向ける偉大な世代を生み出した」(ブレマー、写真は国連憲章の調印式) GJON MILIーTHE LIFE PICTURE COLLECTION/GETTY IMAGES

<アメリカ人が「アメリカ第一主義」を捨てることで国連は誕生した。団結なき現代社会で進む大国の覇権争いは世界をどこへ導くのか>

<イアン・ブレマーが語る「コロナ後」「Gゼロ」の新世界秩序 前編はこちら>

ポトリッキオ 私たちが向き合おうとしない難題がいくつもある。あなたはそれを一つ一つ指摘してきたわけだが、今の最大の問題は何だろうか。このパンデミックや国際秩序への対応に関して、私たちが見て見ぬふりをしている問題とは?

ブレマー 最大の問題は、グローバリゼーションの道筋が変わったことだ。過去数十年でモノやサービス、人や思想、データが国境を越えるスピードはどんどん速くなってきた。それが問題を引き起こし、一部の人や国が置き去りにされているのも確かだ。

それでも全体として見れば、これは素晴らしい変化だ。世界中で平均寿命が延び、教育や医療の機会も広げられてきた。これは人類史上、最も画期的な進歩だ。もう全てを白人男性に頼らなくていい。世界の総人口が80億に迫るなか、さまざまな問題の解決に女性やアフリカ人、インド人や中国人、アラブの人たちにも参加してもらえる。それが徐々にでも実現しつつあった。

20200908issue_cover200.jpg

だが今になって突然、グローバリゼーションの方向が変わってしまった。今まではWWW(ワールドワイド・ウェブ)のように世界をつないでいたグローバリゼーションが、今や寸断されたネットワークと化している。アメリカと中国の対立は、私たちがグローバルな課題にグローバルに対応することを不可能にしかねないほど悪化している。

その結果が、新型コロナウイルスへの対応の悪さだ。この最悪な世界的危機には、まさにグローバルな対応が求められるのに、今はグローバルな対応のかけらもない。少なくも9・11テロの後や2008年の世界金融危機の後は、多少の温度差はあったものの、グローバルな対応がなされた。アメリカでは国民が一致団結したし、国際社会もアメリカを中心にしてまとまった。

だが今はそのどちらも起きていない。アメリカは人種差別の問題や赤い(共和党支持の)州と青い(民主党支持の)州の対立などを抱え、さまざまな理由から、かつてないほどに分裂している。

国際的な分裂も見られる。高機能マスクや医療用防護服などのサプライチェーンは国内外で寸断されてしまった。あちこちで保護主義が頭をもたげている。そして医薬品が戦略物資並みの扱いを受けている。

それなりに経済力のある国なら、今はまだ市場で必要な資金を調達できる。しかしもしも来年、再来年にかけて信用収縮が起きたらどうなるか。アメリカが効果的な金融刺激策を打ち出せなくなったら、どうすればいいか。向こう数カ月で、そうした事態が起こる可能性は十分にある。そうなったとき、資金調達を必要とする国々のために、アメリカや他の富裕国は協力して対処するだろうか。そうは思えない。

ワクチンの問題も同じだ。今は協調のかけらもなく、みんなが競い合うばかり。だから開発中のワクチンが140種類を超える。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、スターマー英首相を批判 「イラン攻撃に

ビジネス

ニデック第三者委「永守氏が一部不正容認」、 業績圧

ワールド

米、中東5カ国の大使館職員に退避命令 情勢緊迫で

ビジネス

金現物が下落、ドル堅調が圧迫 銀・白金も安い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医師が語る心優先の健康法
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 6
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 7
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 8
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 7
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中