最新記事

独占インタビュー

イアン・ブレマーが語る「コロナ後」「Gゼロ」の新世界秩序(前編)

LIVING IN THE GZERO WORLD

2020年9月18日(金)17時00分
ニューズウィーク日本版編集部

またヨーロッパにナショナリズムが蔓延しているのは事実だが、各国のナショナリストが一定の考え方を共有しているわけではない。だからEUを動かすテクノクラートの真の脅威にはならない。

しかもEUの頂点には剛腕のアンゲラ・メルケル独首相がいる。新型コロナ危機を受けての総額約2兆ユーロの経済復興計画や新たなEU予算はヨーロッパにおける豊かな国から貧しい国への富の再分配に等しいが、これが成立したのはメルケルのおかげだ。ヨーロッパの貧しい国々にはEUへの反感や疑念が今もくすぶっているが、少なくとも短期的には、これで抑えられるのではないか。

Gゼロ化の流れは強まり、地政学的な後退はますます深刻化しつつある。こんな状況で新型コロナウイルスのような危機が起きてしまったのは残念だが、だからと言って何もかもが壊れてしまうと、急に考え始めるのはおかしい。実際、そういう話ではないのだから。

物は考えようで、これは好ましい危機だとも言える。よほどの必要に迫られない限り、人は物事を修正しないからだ。幸せだった結婚生活が崩壊に向かっていても、何かの突発的な事態が起きない限り人は離婚に踏み切らず、惰性で現状を維持したがるものだ。

もしかしたら今回の危機でも小さ過ぎて、社会契約の在り方を変えるような構造的決断を政府に強いることはできないかもしれない。私はむしろ、それを恐れている。

(中編に続く)

<2020年9月8日号「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」特集より>

【関連記事】
コロナ危機で、日本企業の意外な「打たれ強さ」が見えてきた
新自由主義が蝕んだ「社会」の蘇らせ方

20200908issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月8日号は「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」特集。「Gゼロ」の世界を予見した国際政治学者が読み解く米中・経済・テクノロジー・日本の行方。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

印マルチ・スズキ、値上げ示唆 中東情勢緊迫でコスト

ビジネス

ヘッジファンド、3月は過去4年で最悪のドローダウン

ワールド

韓国CPI、3月は前年比2.2%上昇 予想下回る

ワールド

イラン戦争の目標「達成間近」、トランプ氏が演説 2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経済政策と石油危機が奏でる「最悪なハーモニー」
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 6
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 7
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 8
    カンヌ映画祭最高賞『シンプル・アクシデント』独占…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 10
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中