最新記事

感染症対策

新型コロナウイルスを殺せる虫除けスプレー発見

What is Citriodiol? Insect Repellent Appears to Kill Coronavirus

2020年8月27日(木)14時35分
ハナ・オズボーン

英国防省の研究機関が市販の虫除けスプレーで効果を検証、結果を発表した GOSPHOTODESIGN-iStock

<イギリス軍には4月から、コロナに対する「さらなる用心」のためにある虫除け剤が支給されていた>

イギリスの研究者たちは、虫除け剤に含まれるシトリオジオールに、新型コロナウイルスを殺す効果が期待できることを発見した。

シトリオジオールは、シトリファイン・インターナショナルが開発・製造している油剤だ。ユーカリの一種であるユーカリ・シトリオドラから抽出した油で、同社ウェブサイトによれば、ユーカリの葉の中で通常起きているプロセスを人工的に再現・加速させることで、葉に含まれる成分をp-メンタン3,8ジオール(PMD)という有機化合物に変質させたものだ。シトリオジオールは虫除け効果があることで知られており、米環境保護局(EPA)の認可も受けている。

過去の研究で、シトリオジオールには2004年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)を引き起こすウイルス、SARS CoV-1を殺す効果があることが示されていた。そのため英国防省は、シトリオジオールが新型コロナウイルスにも効果を発揮するのかどうか検証を行っていた。

英スカイニュースは4月、イギリス軍の複数の部隊に、シトリオジオールを含む虫除け剤が支給されたと報じた。有害な副作用がないこの虫除け剤は、兵士たちに新型コロナウイルスに対する「より一層の用心」として提供された可能性がある。

さらなる検証に期待

またスカイニュースは、英国防科学技術研究所による研究で、シトリオジオールには新型コロナウイルス感染症を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスを殺す作用があることが確認されたとも報じた。

報告書によれば、同研究所が効果を検証したのは、シトリファイン社のスプレー式虫除け剤「Mosi-guard Natural」。研究チームはこの虫除け剤を直接ウイルスにスプレーした場合の抗ウイルス活性と、ラテックス製の「人工皮膚」にスプレーした後にウイルスを付着させた場合の作用を調べた。

その結果Mosi-guard Naturalは、液体の状態でウイルスと混ざり合った時に、新型コロナウイルスに対する抗ウイルス活動が確認された。ラテックス製人工皮膚を使った実験でも、抗ウイルス活動が確認された。

だが報告書には、幾つかの補足説明も記されている。たとえば、人工皮膚は人間の皮膚とは別物であり、人間の皮膚上での作用は実験と異なる可能性がある。また研究チームは、時間経過に伴う作用の変化については実験を行っていない。

<参考記事>仏コロナ感染1955人増、ヌーディスト集まるリゾートで感染拡大 地元当局「マスクだけは着用を」
<参考記事>人類最速の男ボルトが新型コロナに 誕生パーティーで参加者から感染か

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 10
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中