最新記事

感染症対策

全米各地のコロナウイルス検査に滞り 「高度な自動化」が裏目に

2020年8月2日(日)19時10分

単純明快な解決策は見当たらず

新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)初期、検査のやり方はどこの国でも似たようなものだった。研究所の職員が機器を使って遺伝子材料を抽出し、別の機器に移してウイルスを確認する。だが、こうした検査は手間がかかり、技術的な熟練を必要とした。

現在、米国の研究所の多くは、高度に自動化された「検体抽出から結果まで」式の分析機器に頼っている。だが一部の専門家によれば、標準化された試薬やパーツがないため、こうしたやり方が不適切であることが分かったという。

クリーブランド・クリニックが運営する複数の研究所の運営を支援するゲイリー・プロコップ氏によれば、政府が国防生産法(DPA)を発動し、疾病予防管理センター(CDC)が出している既存のマニュアルを利用すれば、従来の検査を拡充することもできたはずだと話す。

プロコップ氏は、CDCのマニュアルに準じた検査について、「しっかり標準化された試薬を使っている」と指摘する。「やろうと思えば、企業に頼らずに済む。その種の検査キットなら実際に大量生産できる。だが、誰もそれをやろうとしない」

米保健福祉省がロイターに述べたところでは、連邦政府はDPAを発動して一部の検査用サプライ品を調達したが、CDC推奨の検査に使われる試薬はすでに出回っており、調達を増やす意味はないという。

保健福祉省のミア・ヘック報道官は「サプライチェーンの改善、障壁の解消に向けて企業各社と直接協力し、DPAを通じて投資を行った結果、この秋には、各自動検査のプラットフォームの供給は拡大すると予想される」との見解を示した。

世界で1600万人以上が感染、64万人以上が死亡するという100年に1度のレベルのパンデミックにおいて、検査に関して単純明快な答えはない、と医療専門家は指摘する。

中国では、試薬などを節約するために複数の患者の検体を混合することで、6月には数百万人の北京市民の検査を実現し、感染拡大の再発を抑え込んだ。だが複数の専門家は、この方法では偽陰性が増加する恐れがあり、また感染が拡大している状況では非効率であると警告する。

カナダは従来型の複数ステップ検査で用いられる試薬について国内のサプライチェーンを構築し、ほとんどの患者について2─3日で検査結果が出るようになった。だがこの体制は、米国に比べて人口がかなり少ない国でこそ有効になる。

ワシントン大学医学臨床ウイルス学研究所のアレックス・グレニンガー副所長は、「1日1000件以上の検体を処理するよう求められる場合、あるいは現在の我々のように1日4000件を超える場合には、検査の一部は、『検体投入から結果まで』式の自動検査機に頼らざるを得ない」と話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米戦闘機2機、イランが撃墜 乗員2人救助・1人不明

ビジネス

アングル:インドへの高級ブランド進出、実店舗スペー

ビジネス

米地裁、FRB議長の召喚状差し止めの判断維持 検察

ビジネス

米3月雇用者数17.8万人増、過去15カ月で最多 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 8
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 9
    60年前に根絶した「肉食バエ」が再びアメリカに迫る.…
  • 10
    『ナイト・エージェント』主演ガブリエル・バッソが…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中