最新記事

新型コロナウイルス

幼児は新型コロナウイルスの最強の運び屋だった?──米研究

Children May Be 'Important Drivers' in Coronavirus Spread, Scientists Say

2020年7月31日(金)13時23分
カシュミラ・ガンダー

幼い子どもが感染した場合、症状はより軽く無症状の場合もあるものの、ウイルスを拡散させる力はより強い可能性がある(写真はイメージで記事内容とは関係ありません) hoozone -iStock.

<感染した5歳未満の子どもの鼻粘膜に含まれるウイルス量は年長の子や大人にグループに比べて10~100倍だった>

新型コロナウイルスに感染している5歳未満の子どもは、年長の子どもや成人に比べ、鼻粘膜に含まれるウイルスの量が多いという研究報告が発表された。

トランプ大統領が8月からの学校再開を求めているアメリカでは現在、子どもたちをいつ、どうやって教室での対面授業に戻すべきかをめぐる議論が行われている。米国医師会報の小児科専門誌に発表された今回の報告は、幼い子どもが新型コロナウイルスに感染した場合、症状はより軽く、無症状の場合もあるものの、ウイルスを拡散させる力は年長の子どもや大人より強いことを示している。

研究は、3月23日から4月27日の間に新型コロナウイルスの検査を受けた145人を対象に行われた。いずれも症状が出始めてから1週間以内の感染者で、5歳未満の子ども46人、5~17歳の子ども51人と18~65歳の成人48人の3つのグループに分けて調べた。

その結果、より年長の子どもと成人から採取したサンプルから検出されたウイルスの遺伝物質(RNA)はほぼ同じぐらいの量だったのに対して、5歳未満の子どものサンプルからは、その約10~100倍ものRNAが検出された。

研究チームは今回の研究について、サンプルに含まれる「感染力のあるウイルス」ではなく「ウイルスの遺伝物質」に着目して行ったため、限定的なものだとしている。それでも彼らによれば、過去の複数の研究では、研究者がウイルスを培養する際には、遺伝物質をより多く含むサンプルを使った方がうまくいくことが分かっているという。

ウイルス拡散の「大きな推進力」

そう考えると、子どもは新型コロナウイルスを拡散する「大きな推進力」である可能性があると彼らは指摘する。小児の呼吸疾患を引き起こすRSウイルスの場合も、幼い子どもの方がより多くのウイルスを保有し、それを拡散する傾向が強いことが分かっている。

英バース大学で微生物病因学を研究しているアンドリュー・プレストン准教授(今回の研究には参加していない)は本誌の取材に対して、今回の研究は「興味深い」が「答えを出した以上に多くの疑問をもたらす」と述べた。

プレストンは、遺伝物質(RNA)の量は感染力を測る基準にはならないと指摘。その理由として、RNAには生きたウイルスも、死んだ(つまり不活性化した)ウイルスも、感染した細胞の破片も含まれる可能性があるからだという。

子どもは感染しても年長者に比べて体調が悪化する可能性が低いため、今回の研究対象となった子どもたちは「偏ったサンプル」だった可能性もあるとプレストンは言う。「体調が悪化した子どもは、普通の子どもより多くのウイルスを保有していた可能性が高い。サンプルが、保有するウイルス量の多いごく一部の子どもに偏る可能性が高い」

<関連記事>新型コロナウイルス、患者の耳から見つかる
<関連記事>新型コロナウイルスの免疫は短期間で「消滅」 ワクチン開発ハードル上がる

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回を改めて要求

ビジネス

独総合PMI、12月速報51.5 2カ月連続の低下

ビジネス

ECB、銀行に影響する予算措置巡りイタリアを批判

ビジネス

英失業率、8─10月は5.1%へ上昇 賃金の伸び鈍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中