最新記事

アメリカ政治

「米コロナ致死率は世界最低」と繰り返すトランプの虚言癖

Trump Falsely Insists U.S. Has 'Lowest Mortality Rate' From Coronavirus

2020年7月20日(月)17時45分
ジェイソン・レモン

7月7日、ホワイトハウスで開かれた学校再開に関する会合に出席したトランプ大統領(右)とマイク・ペンス副大統領 Kevin Lamarque -REUTERS

<データを挙げた反論にいらだち、事実誤認を指摘されると「フェイクニュースだ」と逆ギレ>

アメリカのドナルド・トランプ大統領は19日に放送された保守系メディアFOXニュースとのインタビューで、アメリカの新型コロナウイルス感染症による致死率(報告された感染者の中の死亡者の割合)は世界的に見て「最も低い」と述べた。FOXニュースの重鎮クリス・ウォレスがデータを示してアメリカの致死率は「最悪」の部類だと指摘しても、トランプは主張を変えなかった。

トランプはこの数週間、アメリカの新型コロナウイルス感染症による致死率は世界「最低」もしくは「最低レベル」だとの発言を繰り返している。またウイルスはすぐに消えてなくなるとも言ってきた。ケイリー・マケナリー大統領報道官も同様の主張をしているが、これまでに発表されたデータの中にそうした主張を裏付けるものはない。

ウォレスはインタビューの中でこの事実を挙げて反論した。

「アメリカの死亡率は世界で7番目に高く、ブラジルよりも高いしロシアよりも高くなっている。EUはアメリカからの渡航を禁止している」とウォレスは指摘した。

トランプはこれに対し、自分の見解はウォレスの指摘とは「正反対」だとし、「アメリカの致死率は世界で最低レベルだと私は信じている」と述べた。

「それは真実ではない。アメリカではたった1日で900人が(新型コロナウイルス感染症で)死亡している」とウォレスは切り返した。

致死率も人口比の死者数も高いのに

これに対しトランプはデータを確認するよう求めるとともに、ウォレスの言うことは間違っており、「フェイクニュース」だと主張。ウォレスはデータの確認は構わないが、自分が「フェイクニュース」をばらまいているとは思わないと返した。

「君はアメリカの致死率が世界最悪だと言うが、アメリカの致死率は世界で一番ましだ」とトランプは言いつのった。

ウォレスが参照したのはジョンズ・ホプキンズ大学の分析で、これによればアメリカの致死率は3.8%で、感染が急拡大している国々の中では世界第8位となっている(インタビューが行われた時点では7位だった)。

人口10万人あたりの死者数を見ると、アメリカの成績はさらに悪くなる。現時点でアメリカでは人口10万人あたり42人がコロナで死亡している。これは感染が急拡大している国々の中では3番目の多さで、すべての国の中でも10位となっている。

新たに確認された感染者数や死者数も増え続けている。アメリカの感染者数は370万人超で死者数も14万人を超え、ともに世界最悪だ。

<参考記事>中国が新型コロナウイルスは「アメリカ病」と非難
<参考記事>スウェーデンが「集団免疫戦略」を後悔? 感染率、死亡率で世界最悪レベル

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

印自動車大手3社、6月販売台数は軒並み減少 都市部

ワールド

米DOGE、SEC政策に介入の動き 規則緩和へ圧力

ワールド

米連邦職員数、トランプ氏の削減方針でもほぼ横ばい

ワールド

イラン、欧州諸国の「破壊的アプローチ」巡りEUに警
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 9
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中