最新記事

新型コロナ対策

スウェーデンの悪夢はパンデミック以前から始まっていた

The Failure Started Before the Pandemic

2020年7月1日(水)16時40分
カールヨハン・カールソン

高齢者ケアは介護放棄と監督不行き届きの構図と切り離せない。2017年の保健福祉庁のデータによれば、人手不足や訓練不足なども原因で、ケアを受けている高齢者の15.6%に当たる4万人が栄養不足に陥っていた。

6月27日時点でスウェーデンの新型コロナによる死者は5280人、人口100万人当たり523人だ(ノルウェー46人、デンマーク104人、フィンランド59人)。周辺国にできたことがなぜスウェーデンにはできなかったのか。

誰に聞いても納得のいく説明はない。スウェーデンの介護施設のほうが入所者の年齢が高いからとか、施設の規模が大きいからとか。ステファン・ロベーン首相は緊急対応のリソース確保は各地域の義務だと主張。ヨハン・カールソン公衆衛生庁長官はケアスタッフの準備不足の証拠を示されて、驚いていると語った。

どれも真実だろう。誰もが失敗を認めても過失を認めないのは歯がゆいが、責任転嫁は無意味だ。ロベーン政権が政治的介入をせず専門家に任せたのは正しいが、どんなに優れた指導者でも構造的欠陥は数カ月では直せない。

現在の危機を招いた責任は、地方任せにしてきた政府と、何より、最も脆弱な人々を守るという最大の使命を忘却した社会民主主義体制にある。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2020年7月7日号掲載>

【話題の記事】
「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に
ニューヨーク当局が新型コロナ時代のセックス指針を公開「最も安全な相手は自分自身」
日本がタイ版新幹線から手を引き始めた理由
街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...

20200707issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月7日号(6月30日発売)は「Black Lives Matter」特集。今回の黒人差別反対運動はいつもと違う――。黒人社会の慟哭、抗議拡大の理由、警察vs黒人の暗黒史。「人権軽視大国」アメリカがついに変わるのか。特別寄稿ウェスリー・ラウリー(ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中