最新記事

キリスト教

イエス・キリストは白人から黒人に戻る?

Head of Church of England: White Jesus Should be Reconsidered Amid Protests

2020年6月29日(月)15時15分
メーガン・ルース

ワシントンDCの黒人差別反対デモで、キリストに扮した参加者(2020年6月19日) Tom Brenner‐REUTERS

<世界で人種差別に関わる像や記念碑の撤去が広がるなか、ついにイエス・キリストを白人として描く肖像の見直しを英国国教会の大司教が指示した>

イギリスのカンタベリー大司教ジャスティン・ウェルビーは6月26日、英国国教会をはじめ世界中の宗教機関は、「白いキリスト」について「当然」再考すべきだと語った。

制度的な人種差別を終わらせろと抗議する行動が世界中で勢いを増す中、世界の165を超える国にまたがる数百万人もの信者の頂点に立つアングリカン・コミュニオンの大司教が、イエス・キリストを白人として描くことは人種差別的だと反対の声を上げたのだ。

ウェルビーは26日、イギリスBBCラジオ4の番組で、多様な文化的背景を持つさまざまな教会を訪問した経験を語った。その多くで掲げられていたのは、白い肌のキリスト像ではなかったという。

「イエス・キリストの姿は、文化、言語、解釈の数と同じだけさまざまな描写がある」と、ウェルビーは述べた。「白人のキリストではなく、黒人や中国人のキリストもいる。アラブ系のキリストの姿もあって、それは最も本物に近い」

宗教機関による描写の再検討に加えて、教会の敷地内に設置されているキリスト像やその他の歴史的人物のあらゆる彫像の必要性を見直す時が来た、とウェルビーは語った。カンタベリー大聖堂やウェストミンスター寺院のような場所に現存する多くの彫像を残すかどうかは自分が決めることではないが、すべてを残す必要があるかどうかは議論の余地がありそうだ、と彼は言う。

白いキリストは偽善

「像はそれが設置された背景のなかでとらえる必要がある。取り除くべきものもあるだろう。一部は名前を変える必要がある」と、ウェルビーは語った。「カンタベリー大聖堂の周囲を歩けば、あらゆるところで彫像に出会う」

ウェルビーがこの発言をしたとき、世界各国の指導者は、公共の場所に設置された人種差別主義者の記念碑は本当に死守する価値がるのかどうか、迷っているところだった。

アメリカでは、人種差別に対する抗議デモの参加者や都市の指導者の一部が、南北戦争のときの南部連合軍の将軍やクリストファー・コロンブス、奴隷制とつながりのある一部の建国の父などの像や記念碑を破壊・撤去する行動を起こしている。

市民活動家のショーン・キングは、白人のイエス・キリスト像は「白人至上主義の一形態」であるとし、ツイッターで撤去を呼びかけた。

キングは浅黒い肌をしたイエス像を投稿している。英BBCがドキュメンタリー番組のために再現したイエスが生まれた当時のパレスチナの男性の顔だ。


BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動ニューヨーク地区責任者のホーク・ニューサムは24日、フォックス・ニュースのインタビューでキングに同調した。「青白い肌のキリストの肖像は、アメリカと世界における偽善と白人至上主義にすぎない」と、ニューサムは言った。「イエスは白人ではなかった。誰でも知っていることだ」

<参考記事>キリスト像の撤去まで求める過激な主張の根拠──黒人差別反対運動
<参考記事>BLMの指導者「アメリカが我々の要求に応じないなら現在のシステムを焼き払う」の衝撃

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米との貿易戦争休戦、1年間延長で合意=中国商務省

ビジネス

現代自、第3四半期は米関税で29%減益 通期目標は

ワールド

ウクライナ、エネ施設への攻撃受け電力供給を制限=当

ビジネス

SMBC日興、7─9月期純利益は6割増 政策株売却
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨の夜の急展開に涙
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理…
  • 6
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 7
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中