最新記事

韓国社会

韓国、新型コロナ対応で公務員からサムスンまで「ステイホーム試験」

2020年6月23日(火)08時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

ネット経由で「ステイホーム試験」を実施したサムスン電子の受験風景 YTN News / YouTube

<ドライブスルー検査などで注目された韓国が外出しなくてすむ就職試験を実施?>

新型コロナウイルスのパンデミックが世界を襲い、生活の中の常識ががらりと変わってしまった。各国で外出禁止や自粛が求められ、さまざまな行事が中止や延期となり、いまだに影響が出ている。

韓国では、今月13日に行われた公務員試験で、コロナ感染のために現在自宅隔離を余儀なくされている受験者のため、苦肉の策として自宅での受験許可が発表され波紋を呼んだ。

韓国人にとって公務員試験は人生を左右する一大事である。この試験を受けるために専門の塾へ通い、コシウォンと呼ばれるベッドと机しかないような狭い1人部屋にこもって勉強や準備に何年も費やし、浪人時代を過ごす人も多い。日本でも、公務員は安定した職業という意味で多くの人が就職を望むようだが、韓国ではその何倍も人気が高い。

日本の感覚とは違い、韓国ではたとえ名だたる大企業に就職できたとしても、一部の管理職を除いて40代後半で脱サラを考えざるを得ないという厳しい現実が待っている。韓国の街を歩くとチキン屋をよく目にするが、脱サラし退職金でフランチャイズの食堂を始める人が多く、チキン屋はその代表的な商売だと言われている。

そんななか、定年まで安心して働いて給料がもらえる職業として、公務員は高い人気を誇っている。今年は今月13日に8.9級地方公務員試験(日本の国家Ⅲ種・地方初級に相当)と、教育省公務員試験が同時に開催され、受験者は約30万人と過去最大規模の試験となった。

新型コロナで自宅隔離中の受験希望者どうする?

このように、今後の人生を大きく左右する試験なのだが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大のため、自宅隔離中の受験者への対応が注目されることとなった。韓国政府は10日、自宅隔離者へ急遽自宅での受験を許可すると発表した。試験日前日の12日午後6時までに申請すれば、監督官1~2人、看護人1人、警察1人を自宅に派遣し、監視の下試験を受けられるというのだ。

自宅での試験対応はまだしも、受験者1人に対してこの人数を派遣する対応は、日本の感覚からすると信じられないかもしれない。しかし、韓国では大学入試の日、英語のリスニングの音が聞こえないかもしれないという理由で飛行機の運行スケジュールを変更し、遅刻しそうな受験生を警察が白バイやパトカーに乗せて試験会場まで送り届けてくれる国である。

コロナに感染したからといって、自己責任や自己管理不足という言葉で片づけるわけではなく、何とか試験を受けさせようと周りも一緒になって努力するのが当たり前なのだ。


【関連記事】
・新型コロナ、血液型によって重症化に差が出るとの研究報告 リスクの高い血液型は?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・アメリカが接触追跡アプリの導入に足踏みする理由
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ビジネス

FRBミラン理事「物価は再び安定」、現行インフレは

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 6
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 7
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 8
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中