最新記事

米黒人差別抗議デモ

NY市警官が反論「黒人の命も大事だが警官の命も大事」

Two Wrongs Don't Make a Right

2020年6月19日(金)17時40分
ジョゼフ・インペラトリス(ニューヨーク市警巡査部長)

首都ワシントンの警官隊のなかで1人跪き、抗議デモへの連帯を示す警官 Jonathan Ernst-REUTERS

<暴力や略奪に弁解の余地はない、今こそ法と秩序を取り戻さなければならない>

14年以上ニューヨーク市で警察官を務めてきた私は、数十年前のタイムズスクエアは行ってはならない場所だったという話をよく聞いた。昔は売春から麻薬取引、窃盗まで、犯罪が横行する地域だったそうだ。マンハッタンの大半も1980~90年代は危険な場所だった。まさかこの偉大な街が再び危機に陥るとは、想像もしていなかった。

ここ数日のニューヨークは、見るに堪えない状況だった。警察官の努力と献身は台無しになり、時代が逆戻りした。ひどい略奪と暴力を目の当たりにすると、心が痛む。店は破壊され、商品が奪われ、警察車両に火が付けられた。

ニューヨークと全米中の警官はショックを受けている。人々を守るために数百人もの警官が命を犠牲にしてきたが、今やその人々が常軌を逸した行動に走っている。

暴力と破壊が繰り返され、警官は車にはねられ、負傷している。現場はまさに戦場だ。

全ての警官は、あのミネソタ州の警官がやったことを恥じている。彼は越えてはならない一線を越えただけでなく、人々に奉仕し、人々を守るという警官の宣誓にも背いた。1人の人間をあんなふうに扱ってはならない。

私たちも世界の他の人々と同じだ。彼が逮捕され、警官の地位を奪われたことを喜んでいる。1人の男性が警官との接触で命を落としたことに傷つき、恥じている。警官はあのような行動を取るべきではない。

暴徒の責任も問うべき

だが店に押し入り、略奪してはいけない。そのような行為に弁解の余地はない。

彼(死亡した黒人男性ジョージ・フロイド)のことを忘れてはならない。なぜあんなことが起きたのかを問うべきだ。二度と起きないようにするためにはどうすべきなのかを議論すべきだ。

しかし、現状はそうなっていない。私は現役の巡査部長として、暴動と向き合っている。若い暴徒たちが街を走り回る光景はバットマン映画のゴッサム・シティのようだ。

彼らは何のために戦っているのかも分からないまま、それぞれが勝手に反応しているだけだ。マーチン・ルーサー・キングやジョン・レノンのような偉人のまねをしているが、実際は似ても似つかない。

人々は「正義」を要求するが、自分たちの行動を正当化するために法を犯している。犯人は既に逮捕された。再び誰かに危害を加えないように身柄を拘束されている。なぜこの問題をその他の世界のせいにするのか? なぜ人々に奉仕し、人々を守る善良な警官に八つ当たりするのか?

<参考記事>Black Lives Matter、日本人が知らないデモ拡大の4つの要因
<参考記事>【バー店主の手記】抗議の声を心から支持するが、破壊はデモを台無しにする

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB追加利下げは慎重に、金利「中立水準」に近づく

ビジネス

モルガンS、米株に強気予想 26年末のS&P500

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機「ラファール」100機取得へ 

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 120億ドル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中