最新記事

感染症対策

新型コロナ収束で消える「感染ホットスポット」 ワクチン開発の障害に

2020年6月6日(土)13時07分

エボラワクチンでも同様の難しさ

ワクチンの治験では、参加者を治療群と対照群に無作為に分け、治療群には治験用の試作ワクチンを投与し、対照群にはプラセボ(偽薬)を投与する。

治験参加者は、疾病が広まっているコミュニティに戻り、その後の感染率を比較する。期待されるのは、プラセボを投与した対照群における感染率の方が高く、ワクチンが治療群を守っていることが示されるという結果だ。

英国、欧州大陸、米国におけるCOVID-19(新型コロナウイル感染症)の流行がピークを越え、新型コロナウイルスの感染率が低下しつつあるなかで、科学者らにとって重要な仕事は、波のある感染状況を追いかけ、まだCOVID-19が活発な人口集団・国において治験参加希望者を見つけることである。

2014年、西部アフリカにおけるエボラの大規模流行の際に、科学者らが新たなワクチン候補の治験を行おうとしたときにも、似たような問題が発生した。当時、製薬企業は大規模治験の計画を大幅に縮小せざるをえなかった。感染者数が減少し始めた流行末期になって、ようやく治験用の試作ワクチンを用意できたからである。

海外感染地での実施検討も

COVID-19用ワクチンのうち、先頭を切って「フェーズ2」治験、つまり開発の中期段階に入るものの1つが、米国のバイオテクノロジー企業モデルナによるものだ。

もう1つは、アストラゼネカと提携してオックスフォード大学の科学者らが開発中のワクチンである。米国は7月、ワクチン1種あたり2万─3万人のボランティアによる大規模な有効性試験を行う計画である。

コリンズNIH所長によれば、米国の医療当局者は、まず政府機関・医療産業が持つ国内の臨床試験ネットワークを利用し、感染状況マップを使ってウイルスの活動が最も盛んな地域を見極めることになるという。国内の感染率が低くなりすぎれば、海外に目を向けることが検討されるだろう、と同所長は話している。

米国政府はこれまでにも、HIV、マラリア、結核のワクチン治験をアフリカで行った経験がある。

「アフリカでは現在、COVID-19の感染例が多数発生しつつある。治験の一部をアフリカで行いたいということになっても不思議はない。効果的にデータを集められることが分かっているからだ」とコリンズ所長は言う。

アストラゼネカと提携している英オックスフォード大学ジェンナー研究所のエイドリアン・ヒル所長は、先月フェーズ2治験を開始した。英国内で約1万人の参加者を募りたいとしている。

ヒル所長はロイターに対し、英国ではCOVID-19の感染率が低下しており、結果を得るのに十分な感染が見られない場合には治験を中止せざるをえないだろうと語った。

「そうなれば残念だ。現時点では大丈夫そうだが、確実にその可能性はある」とヒル所長は言う。


【関連記事】
・東京都、新型コロナウイルス新規感染20人 5日連続で2桁台続く
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・韓国ではなぜ新型コロナ第2波のリスクが高まったのか
・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アップル、米国内生産計画にTDKなど4社追加 4億

ワールド

トランプ氏、中東へ地上部隊1万人増派検討=WSJ

ワールド

米政権によるアンソロピックのリスク指定、地裁が一時

ビジネス

政府、26年度暫定予算案を閣議決定
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 3
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRANG』に託した想い、全14曲を【徹底分析】
  • 4
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 5
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 6
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 7
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 8
    トランプが誤算? イラン攻撃延期の舞台裏、湾岸諸国…
  • 9
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 10
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 9
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中