最新記事

ドイツ

ドイツで知名度をあげたウイルス学者は、コロナ予防策への激しい反発にあっている

2020年6月3日(水)19時30分
松岡由希子

新型コロナ感染対策で一気に有名になったシャリテ大学病院ウイルス学研究所のクリスチャン・ドロステン所長...... Michael Kappeler/Reuters

<ドイツの新型コロナウイルス感染対策で重要な役割を担い、一気に知名度をあげたウイルス学者は、反発の矢面に立たされている......>

ドイツでは、新型コロナウイルス感染拡大を抑制するべく2020年3月16日から実施した都市封鎖(ロックダウン)を5月6日以降、段階的に緩和している一方で、接触機会を可能な限り低減させる「接触制限」を6月29日まで継続するほか、他者と1.5メートル以上のソーシャルディスタンス(社会的距離)を確保し、公共交通機関の利用や買い物の際にマスクを着用するよう国民に義務づけている。

長期にわたって日常生活が制限されることに不満を募らせる国民は少なくない。首都ベルリンミュンヘンなどの各都市では、これらの規制に反対する「ハイジーン・デモ」が行われている。

ウイルス学研究所ドロステン所長の知名度や注目度は急激に高まった

他の国々と同様、ドイツ政府の公衆衛生対策は、ウイルス学者らの専門家によって支えられている。2003年にSARSコロナウイルスを発見したことでも知られる独シャリテ大学病院ウイルス学研究所のクリスチャン・ドロステン所長は、その中心人物だ。ドロステン所長が新型コロナウイルスにまつわる疑問に答える北ドイツ放送(NDR)のポッドキャスト「ダス・コロナウイルス・アップデート」がドイツ国内でまたたく間に人気を集め、ドロステン所長の知名度や注目度は急激に高まった。

ドイツ政府の規制を批判する声が高まるなか、ドロステン所長をはじめとする専門家がその矢面に立たされる事態が起きている。

「多くのドイツ人にとって、私は経済に大きな損失を与える悪人なのだろう」

ドロステン所長らの研究チームでは、新型コロナウイルス感染症の陽性者3712名を対象に、陽性者の年齢と新型コロナウイルスのウイルス量との関係を分析した結果、ウイルス量において子どもと成人に差異は認められず、「子どもも成人と同様、新型コロナウイルスに感染する可能性があり、学校や幼稚園の再開は慎重にすすめるべきだ」との研究論文を公開した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏独英、中国の台湾周辺軍事演習に懸念表明 一方的な

ワールド

サウジ、イエメン南部の港を空爆 UAE部隊撤収を表

ワールド

ロ、ベラルーシに核搭載可能ミサイル配備 欧州全域へ

ワールド

ウクライナ、米軍駐留の可能性協議 ゼレンスキー氏「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中