最新記事

テロ

インドネシア、IS忠誠組織がテロ 警察官刺殺、容疑者もその場で射殺

2020年6月3日(水)20時32分
大塚智彦(PanAsiaNews)

襲撃された地元警察の警察車両が炎上している。KOMPASTV / YouTube

<新型コロナと断食月による混乱に乗じてテロ組織の活動が活発化するか──>

インドネシアのカリマンタン島で6月1日に警察官1人が刃物で刺殺される事件が起き、容疑者はその場で他の警察官に射殺された。容疑者の遺留品に中東のテロ組織「イスラム国(IS)」の旗に酷似した旗や同志に宛てたメモ、イスラム教の聖典「コーラン」などが残されていたことから、警察ではISと関連があるインドネシアのテロ組織が関与した可能性が高いテロ事件として本格的な捜査を始めた。

マレーシアと国境を接するカリマンタン島(マレーシア名ボルネオ島)の南ダハ郡にある地元警察の分駐所で、1日午前2時15分ごろ、近くに駐車していた警察車両が放火されて爆発する事件が起きた。

現地からの報道や警察発表などによると、当直で分駐所にいた警察官レオナルド・ラティパプア氏が爆発音に気づいて外に出たところ、正体不明の男から日本刀のような刃渡りの長い刃物で切り付けられた。

さらに男は分駐所に侵入して立て籠もろうとしたが、別の当直の警察官2人が駆けつけ、うち1人が男に発砲。警察官を切りつけた男はその場で射殺されたという。レオナルド警察官は近くの病院に急搬送されたがそこで死亡が確認されたという。

書置きメモでジハード呼びかけ

男はその後の調べで付近に住むアブドゥル・ラフマン(19)容疑者と判明した。所持していた遺留品にはISがよく使用する黒字にアラビア語で文字が書かれたISの旗に酷似した旗、コーラン、日本刀の様な刃物、そして書置きのようなメモがあったという。

地元メディアなどによるとメモには「警察と戦うために行動を起こした。全ての兄弟よ目覚めよ、そして賢くなれ、ジハード(聖戦)は決して終わることがない」という趣旨のことが記されていたという。

こうした遺留品などから州警察などではISに忠誠を尽くすインドネシアのテロ組織「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」と関係があるテロ事件とみて国家警察対テロ特殊部隊の「デンスス88」を現地に急派。アブドゥル・ラフマン容疑者の周辺や背後関係の捜査を現在進めている。

一部外国メディアはISに関係する組織が今回の警察官刺殺テロに関する「犯行声明」を出したと報じているが、警察当局は現時点ではいかなる組織の犯行声明も確認していないとしている。

JIDはMITと並び最も危険なテロ組織

今回の警察官襲撃で関与が疑われているJIDは2014年ごろに設立された親ISのインドネシアのテロ組織。2018年5月に第2の都市である東ジャワ州の州都スラバヤのキリスト教会連続自爆テロ、2019年10月には当時のウイラント調整相の刺傷テロ、同年11月のスマトラ島メダンにある警察本部内での自爆テロなど数々のテロ事件を実行している。

スラウェシ島を主な拠点とするテロ組織「東部インドネシアのムジャヒディン(MIT)」と並んで、現在インドネシアで最も危険なテロ組織として治安当局の主要摘発ターゲットとなっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

原油先物7%超安、イランが米軍基地攻撃も原油輸送は

ワールド

米国務長官、中国にイランへの働きかけ要請 ホルムズ

ビジネス

米国株式市場=上昇、FRB当局者の利下げ発言を好感

ワールド

米下院議長、対イラン軍事制限法案の採決拒否 米軍基
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 8
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 9
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 10
    【クイズ】次のうち、中国の資金援助を受けていない…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中