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インドネシア、IS忠誠組織がテロ 警察官刺殺、容疑者もその場で射殺

2020年6月3日(水)20時32分
大塚智彦(PanAsiaNews)

仲間の裁判開始を狙った可能性

今回の犯行に関しては2018年5月のスラバヤ教会テロ、2019年5月のJIDメンバーと治安当局の銃撃戦で2人が射殺された事件と、2年続けて5月に発生したJIDに関係する事案との関連でこの時期を狙ったのではないかとの見方も出ている。

また2019年10月にウイラント調整相を刃物で襲撃したJIDとされる容疑者2人の裁判が4月9日から始まっており、この裁判での容疑者を支援するための作戦との見方もでている。

西ジャカルタ地裁で始まっているこの裁判では折からの新型コロナウイルスの感染拡大防止措置として、JIDメンバーとされるシャシリル・アラムシャ容疑者(51)とその妻の2人は収監中の西ジャワ州ボゴールの施設からオンライン中継で「出廷」。検察側の起訴状朗読などを「遠隔裁判」で聞くという異例の形での裁判となっている。

一部では裁判に容疑者が出廷する従来の形式の裁判より、容疑者の安全が確保できることからコロナ禍を奇禍として、テロ容疑者の裁判は当分の間こうした形式が採用されるとの見方も広がっている。

コロナとテロ警戒求められる政府

インドネシアでは首都ジャカルタに出されているコロナ感染拡大阻止策の「大規模社会制限(PSBB)」が早ければ6月4日にも解除され、制限の順次緩和が予定されている。しかしこれまでの制限で失業者や生活困窮者が首都圏には溢れており、犯罪件数も増加傾向にある。そこにイスラム教の断食月(5月23日まで)終了後の休暇で当局の禁止にも関わらず帰省していた多数市民のUターンが始まっている。

こうした混乱と混雑が予想される中で政府はコロナウイルスの感染第2波を予防しながら犯罪やテロを警戒することが求められている。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

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