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新型コロナウイルス

ウイルス発生源をめぐる米中対立と失われたコロナ封じ込め機会

2020年4月22日(水)15時15分
小谷哲男(明海大学教授・日本国際問題研究所主任研究員)

こうして、米中は既述のようにウイルスの呼称や発生源に関して非難の応酬を始めた。3月27日にトランプ大統領と習近平主席が電話会談を行い、両国は協力を拡大することで一致 した。これをうけて、クシュナー大統領上級顧問が中国側と交渉し、防護服やマスクなどが中国から米国に届くようになった。一時休戦である。

しかし、休戦は長続きしなかった。ニューヨークを中心に米国内の感染は想定以上のペースで拡大し、大統領選挙への悪影響が懸念されるようになると、トランプ政権は中国の責任を追及するようになった。これが、中国の研究所が発生源となった可能性が公に指摘されるようになった背景である。

この流れの中で、WHOは中国共産党の共犯とされた。WHOのテドロス事務局長は「中国寄り」とされ、中国の情報をそのまま受け入れ、ヒトからヒトへの感染の可能性も否定した。WHOによる緊急事態やパンデミックの宣言も、中国国内の事情に配慮したタイミングで行ったと批判された。こうして、トランプ大統領は4月14日に、WHOへの拠出金の提供を当面の間停止すると発表することになった。

失われた機会

繰り返しになるが、現時点では武漢ウイルス研究所がCOVID-19の発生源になったという確たる証拠はない。しかし、パンデミックの最中に米中の感染症対策の最前線が発生源であることが疑われ、両国の対立が深まったことは、1970年代以降の米中関係における最大の皮肉である。トランプ政権としては、11月の大統領選をにらみ、中国共産党の責任を追及する姿勢を維持し、WHOのテドロス事務局長の辞任を求めていくであろう。米国内では、米政府が武漢ウイルス研究所に資金を提供してきたことが批判されるようになっている。また、フロリダ州などでは、住民が中国共産党を提訴し、新型コロナウイルスの感染拡大の責任を問う動きも始まるなど、対中批判は草の根レベルにまで拡大している。トランプ政権による中国の責任追及は、米国内のアジア系差別の助長にもつながっている。

2003年のSARSの感染拡大をうけて、米中は感染症対策での協力を拡大させてきた。世界各国の指導者が中国政府のSARSへの対処を批判する中、ブッシュ大統領は胡錦濤主席の対応を評価し、米中の保健当局間の連携が進んだ。米国の疾病対策管理センターの専門家が北京の米国大使館に常駐するようになり、中国はWHOの専門家を受け入れ、治療薬とワクチンの開発に取り組んだ。2005年には米国疾病対策予防センターが中国に出先のオフィスを持つようになった。2008年の新型インフルエンザ(H1N1)が蔓延した際には、中国が米国への支援を表明し、中国の研究チームがワクチンを開発した。2014年にエボラ出血熱の感染が拡大した時も、両国は協力関係を維持し、アフリカでの対策を調整しながら行った。

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