最新記事

新型コロナウイルス

コロナ抗議デモ拡大、トランプが反抗をけしかけ「ミシガンを解放せよ」

GOP Governor Criticizes Trump for Encouraging State Protests

2020年4月20日(月)15時20分
ジェイソン・レモン

外出禁止令の延長に「3密」で抗議する人々(テキサス州オースティン、4月18日) Callaghan O'Hare-REUTERS

<外出制限より仕事を返せと主張する命知らずの抗議デモが広がり始めた>

アメリカの一部の州では、新型コロナウイルス感染抑止のための「自宅隔離」や「外出禁止」などの厳しい措置に対する抗議デモが広がっている。そしてドナルド・トランプ大統領がそれをけしかけている、とメリーランド州のラリー・ホーガン知事(共和党)は批判した。

ホーガン知事のメリーランド州では4月18日にデモが起きた。州都アナポリスでデモ隊が派手に車を走らせ、旗を振り、警笛を鳴らした。

新型コロナウイルスの感染者数は全米でまだ増加を続けており、トランプ政権が16日に発表した経済活動再開のためのガイドラインの条件はまだ整っていない。それでもデモ参加者たちは、経済活動の再開と職場復帰、自由や人権の回復を求めた。

「デモをけしかけるのは有益ではない」と、ホーガンは19日のCNNのインタビューで語った。「大統領が示したガイドラインでは、感染者数の減少が14日間続かなければ、経済活動を再開はできない。メリーランド州でも、他のデモが起きた州でも、感染者数はまだ増え続けている」と、説明した。

ミシガン州ランシングで4月16日に行われたデモ


ホーガンはデモ参加者が訴えた不満には理解を示し、安全にできるだけ早く経済活動の再開に向けて努力したい、と語った。

しかし、一刻も早く感染抑止措置を解除しアメリカ経済を再起動したいトランプは17日、「ウイルスより失業が怖い」と、マスクも社会的距離を確保することもせずにデモを行う人々に対し、「ミネソタを解放しろ」、「ミシガンを解放しろ」、「バージニアを解放しろ」と連続で応援のツイートをした。

「多くの抗議デモが行われ、知事たちはうろたえただろう」と、トランプは後に語った。「他人にああしろこうしろと命令される必要がない人間もたくさんいるのだ」

命を捨てろというメッセージ

やはり抗議デモが起きているミシガン州のグレッチェン・ホイットマー知事(民主党)はこう反論した。

「ミシガン州は、死者数が全米で3番目に多い。そしてミシガンはアメリカで10番目に大きな州だ。これがいかに大きな問題かは誰でもわかるだろう」と、ホイットマーは19日のCNNの番組で語った。「大きな州であるがゆえに被害は不釣り合いに大きい。だからこそ、私たちは州民を守るために特別に厳しい措置をとる必要がある」

ワシントン州のジェイ・インスリー知事(民主党)も、ABCニュースのインタビューでトランプを厳しく批判した。

「アメリカの大統領が規律違反を奨励するとは。こんなことがアメリカで起きることは、私の知る限り、ありえない」と、インスリーは19日に語った。「これは危険なことだ。国民に、命を救うために必要なことを無視させるなんて」

ジョンズ・ホプキンス大学の追跡調査によれば、19日午後の時点で、アメリカでは72万人以上がコロナウイルスに感染していることが確認された。そのうち3万4000人近くが死亡、6万5000人近くが回復している。

(翻訳:栗原紀子)

<参考記事>米ミシガン州で「ウイルスより経済が心配」と命知らずの抗議デモ
<参考記事>トランプ、経済再開へ指針公表 各州にそれぞれの状況に合わせ3段階アプローチ提言

20200428issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中