最新記事

外出自粛

「火星探査」で学んだ隔離生活を楽しむ9つのコツ

Living Life at a Distance

2020年4月10日(金)18時30分
ケイト・グリーン(元科学者・ジャーナリスト)

火星であれ地球であれ隔離された状態で過ごすつらさは同じだ PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTO BY EVGENIY SHKOLENKO/ISTOCK/GETTY IMAGES PLUS

<新型コロナ対策にも応用可能──「火星」に住む実験に参加して分かった閉じ籠もり生活の不安と不満の解消法>

2013年、私は荷造りをしてハワイの活火山マウナロアにあるドーム型施設に入った。NASAが支援する模擬火星探査ミッション「HISEAS」に参加するためだ。溶岩原に囲まれた火星そっくりの環境で4カ月間、6人の「クルー」が隔離生活を体験。物理的、心理的、社会的影響を調べて将来の火星探査に役立てようというわけだ。

家族や友人と離れ、交信にも時間がかかる。食事も新鮮な果物や野菜はなく、保存の利く食品だけ。外に出る際は必ず「宇宙服」(といっても政府払い下げのぶかぶかの防護服だが)を着用しなければならなかった。

世界には、何カ月も隔離(缶詰め)生活を強いられる人がたくさんいる。慢性病患者、障害者、受刑者、新米ママ、大学院生、在宅勤務のフリーランス......。そして今は、新型コロナウイルスの急激な感染拡大を受けて、多くの人が外出自粛を求められている。

隔離生活がつらいのは宇宙でも同じ。2年半の火星探査ミッションで宇宙飛行士はどんな問題に直面するのか。彼らがそれに対処するのを、どう支援すればいいか。こうした問題を慎重に検討した上でクルーを選び、計画を立てないと、ミッションが水の泡になりかねない。

模擬探査と新型コロナ対策としての隔離生活の最大の違いの1つは、不確実さだ。世界がいま直面している状況は急速に変化している。外出自粛ムードが広がり、いつまで続くか誰も分からない。一方、模擬探査は最初から期間が決まっていた。私たちは節目ごとにお祝いを計画し、「地球に帰還する日」を指折り数えて待つことができた。

それでも参考にできる点もあるはずだ。私たちクルーの経験を基に、隔離生活を乗り切るヒントを紹介しよう。

食事を楽しむ

保存の利く食品をストックしておくのはいいことだ。「火星」の食事は常温保存かフリーズドライか乾燥食品ばかりだったが、工夫次第でおいしくできた。みんなで新しいレシピに挑戦し、節目や仲間の誕生日にはコース料理でお祝いして、単調な毎日に変化をつけることができた。

食べてほっとする味だけでなく、普段は口にしないような新しい味にも挑戦を。新しいレシピも探してみよう。食事の時間を人と触れ合い、新しい経験を楽しみ、安らぎを見いだす時間にしよう。

ニュース速報

ビジネス

米ISM非製造業指数、5月は50.3に鈍化 支払い

ワールド

米NH州のスヌヌ知事、大統領選の共和党候補指名争い

ワールド

偽のプーチン氏演説がラジオ放送、「ウクライナ軍が越

ワールド

ウクライナ反攻に十分な兵器保有、NATO加盟に必要

MAGAZINE

特集:最新予測 米大統領選

2023年6月13日号(6/ 6発売)

トランプ、デサンティス、ペンス......名乗りを上げる共和党候補。超高齢の現職バイデンは2024年に勝てるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    敗訴ヘンリー王子、巨額「裁判費用」の悪夢...最大2000万ドルも 「Netflixで稼いだ金を全部つぎ込むようなもの」

  • 2

    キャサリン妃が「ピンクのドレス」2着に込めた、「友人夫婦」とヨルダンへの敬意

  • 3

    メーガン妃が「絶対に誰にも見られたくなかった写真」、不仲が続く父家族が公開した1枚

  • 4

    嵐で破壊された米クルーズ船の乗客が撮影...浸水する…

  • 5

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 6

    どんぶりを余裕で覆う14本足の巨大甲殻類、台北のラ…

  • 7

    広島G7サミットで日本が失ったものは何か

  • 8

    「白米はよくない」? 健康と環境の両面で知ったこと…

  • 9

    ロシアの「竜の歯」、ウクライナ「反転攻勢」を阻止…

  • 10

    米軍、日本企業にTNT火薬の調達を打診 ウクライナ向…

  • 1

    ロシアの「竜の歯」、ウクライナ「反転攻勢」を阻止できず...チャレンジャー2戦車があっさり突破する映像を公開

  • 2

    「日本ネット企業の雄」だった楽天は、なぜここまで追い込まれた? 迫る「決断の日」

  • 3

    【画像・閲覧注意】ワニ40匹に襲われた男、噛みちぎられて死亡...血まみれの現場

  • 4

    米軍、日本企業にTNT火薬の調達を打診 ウクライナ向…

  • 5

    62歳の医師が「ラーメンのスープを最後まで飲み干す」…

  • 6

    「ダライ・ラマは小児性愛者」 中国が流した「偽情報…

  • 7

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 8

    敗訴ヘンリー王子、巨額「裁判費用」の悪夢...最大20…

  • 9

    どんぶりを余裕で覆う14本足の巨大甲殻類、台北のラ…

  • 10

    ウクライナ側からの越境攻撃を撃退「装甲車4台破壊、戦…

  • 1

    【画像・閲覧注意】ワニ40匹に襲われた男、噛みちぎられて死亡...血まみれの現場

  • 2

    世界がくぎづけとなった、アン王女の麗人ぶり

  • 3

    カミラ妃の王冠から特大ダイヤが外されたことに、「触れてほしくない」理由とは?

  • 4

    F-16がロシアをビビらせる2つの理由──元英空軍司令官

  • 5

    「ぼったくり」「家族を連れていけない」わずか1年半…

  • 6

    築130年の住宅に引っ越したTikToker夫婦、3つの「隠…

  • 7

    歩きやすさ重視? カンヌ映画祭出席の米人気女優、…

  • 8

    「飼い主が許せない」「撮影せずに助けるべき...」巨…

  • 9

    日本発の「外来種」に世界が頭を抱えている

  • 10

    チャールズ国王戴冠式「招待客リスト」に掲載された…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中