最新記事

コロナ対策

新型コロナ解析に世界が結集した「Folding@ home」、世界最大級のスーパーコンピュータに

2020年4月20日(月)18時00分
松岡由希子

参加する有志は2月時点の3万台から70万台へと大幅に増加 Folding@home

<このプロジェクトに参加する有志は2月時点の3万台から70万台へと大幅に増加。Folding@homeは、現在、世界最大級のネットワーク型スーパーコンピュータとなっている......>

米スタンフォード大学を中心とする分散コンピューティングプロジェクトFolding@home(フォールディング・アット・ホーム)は、2020年3月以降、オフィスや家庭から寄付された余剰のCPUやGPUの処理能力を活用し、分子動力学シミュレーションによる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のタンパク質の動的構造の解析に取り組んでいる。

このプロジェクトに参加する有志は2月時点の3万台から70万台へと大幅に増加。Folding@homeは、現在、世界最大級のネットワーク型スーパーコンピュータとなっている。その演算能力は4月14日、2.4EFLOPSに達し、既存のスーパーコンピュータ上位500台を合わせた演算能力を超えた。

専用ソフトをインストールして、誰でも参加できる

Folding@homeは、複雑なコンピュータモデリングを、独自のアルゴリズムにより、独立して並行処理できる小さなタスクに分割し、世界中に点在するコンピュータにこれを割り当てて実行させる仕組みとなっている。このプロジェクトには、専用ソフトウェアをPCにインストールし、これを起動しておくことで、誰でも参加できる。Folding@homeにCPUやGPUの処理能力を提供する時間やその上限を定めることも可能だ。

新型コロナウイルスは、ウイルス表面に発現する「スパイクタンパク質」が、ヒト細胞の細胞膜にある「ACE2受容体」と結合し、ウイルス外膜と細胞膜と融合することで、ヒト細胞に侵入し、感染すると考えられている。この「スパイクタンパク質」は、3種類のタンパク質で構成されている。

Folding@homeでは、新型コロナウイルスがヒトの組織に侵入するメカニズムの解明にあたり、スパイクタンパク質を構成する3種類のタンパク質に着目。コンピュータシミュレーションによってスパイクタンパク質がどのような働きをしているのかを探っている。以下の動画は、スパイクタンパク質が「ACE2受容体」に結合する様子をシミュレーションで示したものだ。

The COVID-19 Demogorgon (aka spike) in action


治療法のシミュレーションを開始する計画も

Folding@homeでは、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の解析のほか、「新型コロナウイルスがヒト細胞へ侵入した後、細胞の翻訳機構をどのようにコントロールするのか」を解明する研究プロジェクトにも3月30日、着手した。

Top docked compounds from the initial batch of COVID Moonshot compounds


4月13日には、香港科技大学と提携し、ウイルスRNA複製を標的とした既存薬の転用による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療法のシミュレーションを開始する計画も明らかにしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、チェイニー元副大統領の追悼式に招待され

ビジネス

クックFRB理事、資産価格急落リスクを指摘 連鎖悪

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、インフレ高止まりに注視 

ワールド

ウクライナ、米国の和平案を受領 トランプ氏と近く協
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中