最新記事

アメリカ社会

アメリカでも「公文書改ざん」、トランプ政権に忖度か

National Archives Apologizes for Altering Women's March Photo

2020年1月21日(火)17時20分
ハンター・モイラー

2017年のウィメンズマーチ(ワシントン) Bryan Woolston-REUTERS

<歴史の番人がよりにもよって、歴史を振り返る展示の写真を政権と保守派寄りに修正していた>

歴史記録のため重要な公文書を保存するアメリカの国立公文書記録管理局(NARA)は1月18日、女性参政権運動の歴史をたどる展示会に出した2017年ウィメンズマーチの写真を一部修正して、ドナルド・トランプ大統領に対する批判のメッセージをぼやかしたのは「間違いだった」と、正式に謝罪した。

NARAはアメリカ史関連の記録文書の管理・保存を担う独立政府機関で、「合衆国またはいかなる州も、性を理由として合衆国市民の投票権を奪い、または制限してはならない」と定める憲法修正第19条の成立100周年を記念する展示会を開催中だ。

米紙ワシントン・ポストの報道によると、展示のなかに、20世紀初頭の参政権運動の写真と今日の女性運動の写真を組み合わせた大きなパネルがある。それは一方から見ると、ワシントンDCで1913年に行われた参政権運動の白黒写真だが、別の角度から見ると、2017年1月のトランプ大統領就任式翌日にワシントンDCで行われたウィメンズマーチの写真になるという凝った作りだ。

「100年以上もの時を隔てて同じ道を歩む女性の権利運動を結びつける意義深いものだ」と、ワシントン・ポストは伝える。

だが、2017年の写真のほうは修整されていた。マーチ参加者のが掲げるトランプ批判のプラカードが読めなくなっていたのだ。

1つの例では、「神はトランプが嫌いだ」というフレーズの「トランプ」がぼかされ、「神は嫌いだ」としか読めないようになっていた。別の「トランプと共和党──女性に手を出すな」というメッセージでも「トランプ」がぼかされていた。

<参考記事>アメリカで何が女性大統領の誕生を阻むのか(パックン)

女性運動を振り返るのに女性器は汚物扱い?

このマーチでは、女性の性器に言及したプラカードも多かったが、AP通信によるとそれらも修正されていたという。

ワシントン・ポストが写真修正について報じた翌日の1月18日、NARAは、2017年の写真を加工したのは間違いだったと謝罪した。

「米国立公文書記録管理局では、これまでもそして現在も、記録文書に手を加えずに保存することに尽力している」と声明には書かれている。「現在開催中の、憲法修正第19条成立100年を記念した展示会を宣伝するために展示しているパネルでは、2017年ウィメンズマーチの写真に写った文字を見えにくく修正した......写真を修正したのは誤りだった」

NARAの広報担当ミリアム・クレイマンはワシントン・ポストへのメールのなかで、トランプの名前を修正したのは「今の政治論争に巻き込まれないようにするため」だった、と述べている。性器を指す言葉を削除したのは、「会場には多くの若者や学生グループが足を運ぶため」だという。

<参考記事>女性蔑視のトランプを支える「トランプの女たち」のナゾ

AP通信の報道によると、アメリカ自由人権協会(ACLU)はNARAに対し、写真の修正についてさらに踏み込んだ説明をするよう求めたという。

ACLU法務副ディレクターのルイーズ・メリングは、「謝罪だけでは不十分だ」と述べた。「ジョージ・オーウェルばりの検閲で歴史を書き換え、女性の体の一部の呼称を消した理由は何か、そんな指示を出したのは誰か、NARAは一般市民に説明しなくてはならない」

NARAは声明で、問題の写真はすでに撤去され、未修正のものがまもなく展示される予定だと述べた。

(翻訳:ガリレオ)

20200128issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月28日号(1月21日発売)は「CIAが読み解くイラン危機」特集。危機の根源は米ソの冷戦構造と米主導のクーデター。衝突を運命づけられた両国と中東の未来は? 元CIA工作員が歴史と戦略から読み解きます。

ニュース速報

ワールド

原油先物は1%上昇、米最大の石油パイプライン停止で

ビジネス

焦点:米ベンチャー投資家が半導体に熱視線 AI用需

ビジネス

自動車用半導体不足に特化した予算措置を、米業界が議

ワールド

ロシアで戦勝記念軍事パレード、プーチン氏「国益を断

MAGAZINE

特集:韓国ドラマ&映画 50

2021年4月27日/2021年5月11日号(5/ 4発売)

韓国を飛び出し、世界で支持を広げ続ける「進撃の韓流」── いま見るべき映画&ドラマ50作を厳選して紹介

人気ランキング

  • 1

    メーガン妃を誕生日写真から「外した」チャールズ皇太子に賛否...「彼女に失礼」「ごく普通」

  • 2

    オーストラリアで囁かれ始めた対中好戦論

  • 3

    パリス・ヒルトン、ネットで有名なセクシー「パーティー写真」の真相を告白

  • 4

    プロポーズを断っただけなのに...あまりに理不尽に殺…

  • 5

    新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」…

  • 6

    新型コロナが「ただの風邪症状を引き起こすウイルス…

  • 7

    激烈受験バトルを風刺し大ヒット!『SKYキャッスル』…

  • 8

    ヘンリー王子、イギリス帰国で心境に変化...メーガン…

  • 9

    新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタ…

  • 10

    かわいい赤ちゃんの「怖すぎる」声に、両親もスタジ…

  • 1

    オーストラリアで囁かれ始めた対中好戦論

  • 2

    メーガン妃を誕生日写真から「外した」チャールズ皇太子に賛否...「彼女に失礼」「ごく普通」

  • 3

    かわいい赤ちゃんの「怖すぎる」声に、両親もスタジオも爆笑

  • 4

    パリス・ヒルトン、ネットで有名なセクシー「パーテ…

  • 5

    話題の脂肪燃焼トレーニング「HIIT(ヒット)」は、心…

  • 6

    プロポーズを断っただけなのに...あまりに理不尽に殺…

  • 7

    はるな愛「私のとっておき韓国映画5本」 演技に引き…

  • 8

    新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」…

  • 9

    「心をえぐられた」「人生で一番泣いた」...ハリー杉…

  • 10

    コロナとさえ戦わない絶望の国ニッポン

  • 1

    メーガン・マークル、今度は「抱っこの仕方」に総ツッコミ 「赤ちゃん大丈夫?」「あり得ない」

  • 2

    「お金が貯まらない家庭の玄関先でよく見かける」1億円貯まる人は置かない『あるもの』とは

  • 3

    オーストラリアで囁かれ始めた対中好戦論

  • 4

    親日家女性の痛ましすぎる死──「日本は安全な国だと…

  • 5

    ヘンリー王子、イギリス帰国で心境に変化...メーガン…

  • 6

    メーガン妃を誕生日写真から「外した」チャールズ皇…

  • 7

    韓国、学生は原発処理水放出に断髪で抗議、専門機関…

  • 8

    ビットコインバブルは2021年ほぼ間違いなく崩壊する

  • 9

    知らない女が毎日家にやってくる──「介護される側」…

  • 10

    脳の2割を失い女王に昇格 インドクワガタアリの驚く…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
「韓国ドラマ&映画50」SNSキャンペーン 売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月