コラム

アメリカで何が女性大統領の誕生を阻むのか(パックン)

2019年01月25日(金)13時15分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

Women Want an Old White Man / (c) 2019 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<中間選挙で民主党からは多くの女性やマイノリティの議員が当選したが、そんな民主党支持者も大統領候補には「白人男性」のバイデンを望んでいる>

新記録だ! 1月3日に就任した米下院議員の中には106人も女性がいる! しかも下院議長は史上初の女性議長、ナンシー・ペロシ! 正確には7~11年にも務めたので史上初の「女性議長リターンズ」だ。

さらに史上初のアメリカ先住民の女性議員もいれば、イスラム教徒女性議員もいる。バイセクシャル女性議員も女子キックボクサー議員もいる。就任日には民族衣装姿や家族連れの議員が議事堂に現れ、ダイバーシティーの新時代を証明した。

これはもちろん、民主党議員の話。共和党の下院議員は90%が白人男性だ。彼らなりのバラエティーはあるけどね。七三の髪形が右分けの議員も左分けの議員もいるから、支持者は自分たちをしっかり代表してくれていると感じている。

女性議員の急増はドナルド・トランプ大統領への反発で生まれたピンクウェーブ(女性政治力の波)に運ばれたものとみられる。この勢いで2020年には史上初の女性大統領が生まれるに違いない! そう思いがちだが、簡単にはいかなそう。

民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員やキルステン・ジルブランド上院議員は既に立候補を表明し、エイミー・クロブチャー上院議員の発表も時間の問題。優秀な女性候補がそろいそうだが、意外な抵抗勢力が民主党支持の女性有権者だ。彼女たちの多くが好んでいるのは、ジョー・バイデン前副大統領。立候補してもいないのに、世論調査で大きくリードしている。

トランプよりも年上でトランプよりも肌の白い男がなぜ人気? 答えは簡単。選挙に勝てそうだからだ。不公平だが、女性政治家は違う尺度で測られる。男性が声を上げたら「強い」と思われるが、女性は「ヒステリック」。男性が汚い言葉を使ったら「リアル」と言われるが、女性は「下品」。知識がなかったり、嘘をついたり、スキャンダルまみれだったりすると、女性は「無知」「嘘つき」「犯罪者」と呼ばれる。男性は「現大統領」。

前回の大統領選では政治の経験も知識も実績も豊富な女性候補が、それらが全くない男性候補に負けた。問題だったのは性格? それとも性別? 念のために次は男にしよう! 女性も含めてそんな考えの有権者が多い。性差別主義なのか、現実主義なのか分からない。ただただ残念な事実だ。

【ポイント】
DEMOCRATIC WOMEN ARE CHANGING THE FACE OF CONGRESS!

民主党の女性議員が議会の姿を変える!

THE ERA OF THE OLD WHITE BOY IS OVER!
白人年配男性の時代は終わった!

WHO DO YOU LIKE FOR PRESIDENT?
誰に大統領になってほしい?

<本誌2019年01月25日号掲載>

※2019年1月29日号(1月22日発売)は「世界はこう見る:日韓不信」特集。徴用工、慰安婦、旭日旗、レーダー照射......。「互いを利してこそ日韓の国力は強まる」という元CIA諜報員の提言から、両国をよく知る在日韓国人の政治学者による分析、韓国人専門家がインタビューで語った問題解決の糸口、対立悪化に対する中国の本音まで、果てしなく争う日韓関係への「処方箋」を探る。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続

ワールド

トランプ氏、有権者ID提示義務化へ 議会の承認なく
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 5
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 9
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story