最新記事

プラスチック・クライシス

日本は環境政策で「セクシー」以上の牽引役を目指せ

JAPAN CAN DO MORE

2019年11月29日(金)17時40分
エリオット・シルバーバーグ(ジョージタウン大学外交研究所フェロー)、エリザベス・スミス(コンサルタント)

酸性雨や渡り性水鳥の保護など地域的な取り組みが必要なプロジェクトを日本が主導することが期待されている RIAU IMAGES-BARCROFT INDIA/GETTY IMAGE

<「環境問題に弱腰」という評価を覆して、新小泉環境相と日本が国際社会で果たすべき役割>

環境保護とサステナビリティー(持続可能性)は、日本のグローバルなイメージとソフトパワーの柱になりつつある。1997年に京都で行われた国連気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)で議長国を務め、その後も気候サミットやさまざまな合意を忠実に支持してきた日本は、国際的な取り組みの最前線にいる。

日本社会は、自然やミニマリズムの伝統に敬意を払っている。一方で、環境に対する関心の高さは、資源が乏しく、地震や津波、さらには昨今の破壊的な台風など、自然災害に弱いという歴史を反映している。

今年9月に国連気候行動サミットなどに出席した小泉進次郎環境相は、東京、京都、横浜などの大都市で2050年までに温暖化ガス排出の実質ゼロを目指すと強調した。もっとも、気候変動問題に取り組むことは「セクシーだ」という発言は話題になったが、具体的な政策の提示には至らなかった。

日本は主要な外交提言でサステナビリティーをほのめかしながら、環境問題、特に気候変動について、国として実際的な取り組みに欠けるところがある。

2013年12月に閣議決定された「国家安全保障戦略」は、「開発問題及び地球規模課題」に対応し、国際社会で「人間の安全保障」の理念の「主流化」を促すと述べているが、サステナビリティーの概念を日本の外交政策の柱として掲げてはいない。昨年12月に発表された5年間の「中期防衛力整備計画」が気候変動に全く言及していないことは、環境問題が国の安全保障への脅威になり得ると評価されていないことを物語る。

安倍晋三首相は今年4月、地球温暖化防止の国際的枠組み「パリ協定」を踏まえた長期的な成長戦略について語り、環境保護と経済成長はもはや対立する概念ではないと強調した。持続可能な技術などへの投資が、成長とその果実の分配の好循環を生み、次の投資を呼ぶ。

資金と技術の両面から支援

一方で、日本のエネルギー政策は、「フクシマ後」の原子力発電の穴を石炭で埋めているとして、国際的な批判を浴びている。よりクリーンなエネルギーへの移行には、政治と官僚の壁が立ちはだかる。プラスチックごみ問題でも、日本の取り組みは足りないと指摘されている。

今年6月に開催された20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)は、既にパリ協定からの離脱を表明していたアメリカと欧州諸国の対立が顕著になった。議長国の日本が取りまとめた共同声明に、パリ協定の遵守を明言する表現を盛り込むことはできなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ミランFRB理事の反対票、注目集めるもFOMC結果

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ビジネス

前場の日経平均は反発、最高値を更新 FOMC無難通

ワールド

ガザ情勢は「容認できず」、ローマ教皇が改めて停戦訴
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中