最新記事

香港デモ

隠れ家に逃走手段など 香港デモの若者たちを支える市民の輪

2019年11月29日(金)11時02分

デモ長期化、家族内の対立も

スンさんはある日、彼女の抗議参加を知った母親に家から叩き出されたという。

「何も持たず、靴さえ履かずに出てきた」とスンさんは言う。彼女の他にも、抗議への参加をめぐって親とけんかになり、家を出てきた、あるいは追い出された若者は多い。

「絶望感を味わった。どうすればいいのか分からず、ただ、それでも抗議には行く必要があると分かっていた」と彼女は言う。

抗議が何カ月も続くなかで、一部の家庭では深い断絶が生じている。子どもが逮捕される、あるいは今後のキャリアに傷がつくことを心配する親が、デモには参加するなと警告するからだ。

抗議に参加する若者たちは、最近は夕食の時間が怖いという。夕食は香港の家庭生活における重要な柱だが、デモをめぐる口論になってしまうのが当たり前になった。

混乱をめぐるストレスやトラウマは、医療・福祉サービスでは手に負えないメンタルヘルス上の問題を生み出している。抗議に関連する自殺も数件起きており、この夏、ラム長官は、「香港の社会に深く根ざしている根本的な問題」を指摘した。

ティーン世代支援のNPOで働く45歳のナムさんは、200人以上の若者と日常的に接している。その中心は労働者階級の抗議参加者で、親に家を追い出される、仕送りを止められる、学費の支払いを拒否されるといった境遇にある。

ナムさんがこうした問題に対する注意喚起のため、若者たちのエピソードをフェイスブックに投稿しはじめると、すぐさま大きな反響を呼んだ。ナムさんによれば、投稿を開始してから、支援したいと希望する人々から1万件以上のメッセージを受け取っているという。

「支援はすべて私のおかげだと思っている若者もいるが、私の背後には多くの人々がいる、と話すようにしている。すると、彼らは泣き出してしまう」とナムさんは言う。「必要不可欠なニーズを満たすというだけでなく、見知らぬ人からの愛と気遣いがありがたいのだ」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、3月予想上回る6.2万人増 前月

ワールド

ロシア 、 ドンバス地域のルハンスク州完全掌握と発

ワールド

日仏首脳会談、イラン情勢「早期沈静化に向けた意思疎

ビジネス

米住宅ローン金利、6.57%に上昇 昨年8月以来の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 5
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 6
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 7
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中