最新記事

香港デモ

隠れ家に逃走手段など 香港デモの若者たちを支える市民の輪

2019年11月29日(金)11時02分

「政権側が若者を無視している」

抗議運動を支援する香港市民の数を計算する決定的な方法はない。逃亡犯条例への抗議として広がった活動は、いまや返還後の香港に保障された自由に対する介入への抵抗へと変貌してきた。中国はそうした介入を否認している。

香港中文大学が先月750人を対象に行った電話アンケートによれば、抗議参加者が掲げる普通選挙権の要求を支持すると答えた回答者は、前月の74%から80%へと増加している。

これとは別に10月に行われた世論調査では、四面楚歌の状態にあるキャリー・ラム(林鄭月娥)香港行政長官の支持率は、返還後の歴代長官のなかで最低となっている。

ラム長官は、自身の行政府に対する不満が広がっていることを認めつつ、エスカレートする暴力を批判している。ここ数日は、包囲された大学で抗議参加者と警察部隊との抗争が続くに至っており、最近の衝突では、催涙ガス、放水銃、火炎瓶が多数用いられ、何十人もの負傷者が出ている。

カトリーナさんは、自分としては暴力には反対だと言いつつ、彼女が匿っている人々が抗議の際に何をやったか尋ねようとはしない。

彼女は、政府にとっては、なぜ抗議参加者が暴力に訴えなければという気持ちになったかという問題の方が大きいと言う。

ラム長官は自分がどのような存在と見なされているかコメントしていないが、カトリーナさんは「長官は、自分は母親であり、香港の若者たちを我が子のように扱っている、と言う。だが、その子どもたちは、なぜ注意を惹くような行動を起こしているのか」と問いかける。「政権側が、彼らを無視しているからだ」。

先月の香港中文大学による調査では、行政府が大規模で平和的な抗議行動にきちんと対応しなかった場合は暴力的な戦術も正当化されるとの回答は全体の60%にとどまった。抗議活動が殴打や刃物の使用、さらには銃撃まで見られるほど暴力的にエスカレートしている中で、こうした支持に影響が出る可能性はあるが、今のところ、オンラインのグループを通じて抗議参加者に提供される支援に変化は見られない。

「市民は実際に(抗議参加者の)要求を支持しており、政府の対応に怒っている。市民としては、抗議参加者の暴力を非難しにくい」と調査を実施したフランシス・リー教授(ジャーナリズム論)は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中