最新記事

日本社会

世帯格差が子どもの体力低下にも繋がっている

2019年11月20日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

子どもの外遊びの機会はどんどん少なくなっている(画像はイメージ写真です) Milatas/iStock.

<外で仲間と遊ぶ機会が減っている現代の子どもたちの中で、家庭が提供する運動の機会が体力の格差を生み出している>

子どもの体力低下が言われて久しいが、これは体を動かす機会が減っているためだ。塾通い等で忙しく、遊ぶ場もなく、仲間とのスケジュール調整も難しい。<時間・空間・仲間>という「サンマ」を要する野球の実施率は、この30年間で大きく下がっている。

最近はもっとひどく、公園に行くとたいてい「ボール遊び禁止」と書いてあったり、老朽化した遊具の使用を禁止したりする自治体も増えてきた。もはや公園は、子どもの遊び場として機能していない。子どもの外遊びも簡単ではない時代だ。

そうなると、学校外での運動の機会は個々の家庭に依存することになる。親の意向、さらには家庭の経済力にも左右されるだろう。<図1>は、小学生(10歳以上)の水泳、登山の実施率を家庭の年収別に見たものだ。学校の授業で行ったものは含まない。

data191120-chart01.jpg

水泳、登山とも、富裕層の子どもほど実施率が高い。水泳の実施率は年収300万未満では38.2%だが、1500万以上の家庭だと68.3%にもなる。登山の実施率は順に11.3%、22.8%と、倍近くの差がある。

スイミングスクールに通ったり、遠出したりするには費用がかかる。自発的な外遊びが難しくなる中、子どもの運動量は家庭環境に左右されるようになりつつある。その結果、家庭環境とリンクした「体力格差」が生じている可能性がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ議会、8日に鉱物資源協定批准の採決と議員

ワールド

カナダ首相、トランプ氏と6日会談 ワシントンで

ビジネス

FRB利下げ再開は7月、堅調な雇用統計受け市場予測

ワールド

ガザ封鎖2カ月、食料ほぼ払底 国連「水を巡る殺し合
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中