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世帯格差が子どもの体力低下にも繋がっている

2019年11月20日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

それをうかがわせるデータがある。東京都の体力テスト(2018年度)によると、公立小学校4年生男子で総合評価がAないしはBだった子の割合は、23区でみると35.8%から52.8%までの開きがある。前者は荒川区、後者は千代田区で、この2つの区の核家族世帯の年収中央値は500万円以上違っている。年収と体力テストの結果を相関図にすると、<図2>のようになる。

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おおよそ、年収が高い区ほど子どもの体力が高い傾向がある。有意なプラスの相関関係だ。これは2018年のデータだが、5年前の2013年のデータで見ても同じような傾向が見られる(拙著「子どもの体力・健康と家庭の経済力の相関関係」『体育科教育』大修館、2015年5月号)。

家庭環境と関連した学力格差と同時に、体力格差の問題にも関心を払う必要がある。学校の体育の授業を見直すのも大事だが、日々の生活において子どもが運動する機会を公的に保証することが重要だ。学校は放課後や休日、校庭をできるだけ開放し、子どもが思い切り体を動かせる場を提供するべきだ。管理・監督は、教育やスポーツの見識を有する地域人材に任せればいい。

学校教育法137条では「学校教育上支障のない限り、学校には、社会教育に関する施設を附置し、又は学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる」と定められている。いわゆる学校開放だが、今日ではその重要性が増してきている。学校を地域に開くことは、体力格差の解消に寄与することにとどまらない。社会全体で子どもを育てる意識を育むことにもなる。

<資料:総務省『社会生活基本調査』(2016年)
東京都『児童・生徒体力・運動能力,生活・運動習慣等調査』(2018年度)

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