最新記事

アフリカ

国連制裁決議にも従わず......北朝鮮とウガンダのディープな関係

North Korea’s African Ally

2019年11月9日(土)13時15分
R・マクスウェル・ボーン(平和・民主主義・開発国際研究所〔IPDD〕バイスプレジデント)

安保理の北朝鮮制裁専門家パネルが2010年に提出した報告書を見れば、ウガンダが決議を無視して北朝鮮との関係を続けたことは明らかだ。

安保理決議に違反する取引は秘密裏に行われたものの、ウガンダは北朝鮮との友好関係を隠そうともしなかった。2013年6月には北朝鮮のリ・ソンチョル人民保安省副大臣がウガンダを訪問。国内の治安維持での協力についてウガンダ側と協議した。ウガンダでは警察官の寮や訓練施設の未整備が深刻な問題になっていて、こうした建築物の建設で優れた技術を誇る北朝鮮に協力を要請した。

韓国も警戒する親密さ

また、同年7月に開催された朝鮮戦争休戦協定締結60周年を記念する式典に出席するため、ウガンダのエドワード・セカンディ副大統領が北朝鮮を訪問。さらに1年余り後、当時の北朝鮮最高人民会議常任委員長だった金永南(キム・ヨンナム)がカンパラに4日間滞在し、ムセベニ大統領とも会談。両国の歴史的つながりを深めるために訪問したと述べ、北朝鮮の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)の親書を渡した。

このように両国が大っぴらに示す協力関係には、制裁違反も多く含まれており、当然ながら韓国の注意を引いた。

特に2013年2月に発足した朴槿恵(パク・クネ)大統領率いる韓国の保守政権は、ウガンダと北朝鮮の関係に神経をとがらせた。

それが明らかになったのは、2016年夏に朴がアフリカのサハラ砂漠以南の4カ国を歴訪したときだ。朴は韓国の大統領としては史上初めてウガンダを訪問。ウガンダ政府と10を超える協定を締結した。

協定は、ウガンダが北朝鮮との協力を断ち切るという条件で結ばれた。ウガンダの政府高官がこれを否定したと報じられるなど情報が交錯したが、サム・クテサ外相がニュース番組で正式に北朝鮮との協力関係の中断を認めた。

2017年1月に誕生したドナルド・トランプ米政権は、北朝鮮政策の方向を転換し、あらゆる国に北朝鮮との協力関係を完全に断ち切るように迫り始めた。

ウガンダに対する圧力もさらに高まった。同年8月には北朝鮮からの石炭や海産物などの輸入を全面的に禁止する国連安保理決議第2371号が採択され、アメリカは北朝鮮包囲網を狭めていった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中