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国連制裁決議にも従わず......北朝鮮とウガンダのディープな関係

North Korea’s African Ally

2019年11月9日(土)13時15分
R・マクスウェル・ボーン(平和・民主主義・開発国際研究所〔IPDD〕バイスプレジデント)

同年(2017年)9月に開催された国連総会でも北朝鮮は懸案事項の1つだった。各国の代表が演説で問題に言及するなか、ウガンダのムセベニ大統領も制裁決議を遵守していると強調した。しかし同時に、北朝鮮への好意と過去の関係への謝意も付け加えた。

「北朝鮮への制裁を履行するという小さな問題に、ウガンダは従う。北朝鮮との貿易は必要ではない。ただし、過去にわが国の戦車部隊の構築に北朝鮮が協力してくれたことに感謝している」

数十年来の切れない絆

ウガンダはその後も、北朝鮮との数十年来の関係を中断したとする証拠を国際社会に示してきた。2018年1月に国連安保理に提出した報告書では、「市民権・移民局は北朝鮮の医師9人と空軍の指導官14人の入国許可を取り消した」「全ての軍事契約を解除している」など、具体的な措置を挙げている。

ただし、ウガンダのこうした主張を、かなり懐疑的に見る人々もいる。安保理の制裁決議に関しても、自国の利益に抵触しそうなものは、遵守していないとみられる。

2018年12月、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が一部の懐疑論を裏付けるように、ウガンダと北朝鮮の関係が続いており、国連の制裁決議に違反していることを、現地の取材で詳細に報じた。

ウガンダのある軍幹部は、精鋭部隊が北朝鮮の特殊作戦部門の協力で訓練を行っていると語った。別の当局者は、北朝鮮との協力関係については口外することも写真の撮影も固く禁じられていると証言。最近も北朝鮮軍の指揮官から訓練を受けており、「私たちは一度も関係を断っていない」と述べている。

記事によると、軍事以外の分野でも関係が続いている。ウガンダ国内で操業する北朝鮮の鉱業会社や建設会社は、ウガンダでの登録を「中国」あるいは「外国」企業に変更しているにすぎない。病院でも北朝鮮の医療関係者が数多く働いている。

もっとも、ウガンダが国連の制裁決議に従わないことは、ある意味で筋が通っている。半世紀近くにわたり、ウガンダは軍事や経済などさまざまな分野で北朝鮮との協力関係に依存してきたからだ。

2018年に米朝協議が始まってからは、制裁決議に従わない国も増えている。トランプ政権が朝鮮半島の非核化をめぐる交渉を再開しようとしている今、ウガンダが引き続き北朝鮮との協力関係を深めるだろうという予想も、それほど見当違いではないはずだ。

©2019 From thediplomat.com

<本誌2019年11月12日号掲載>

【参考記事】【対韓国・北朝鮮】日本は「核保有した統一朝鮮」を利用せよ
【参考記事】絶望の縮図シエラレオネに希望を探し求めて

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