最新記事

気候変動

「気候変動は社会的転換点に突入した」

Thousands of Scientists Around the World Unite to Declare Climate Emergency

2019年11月6日(水)18時15分
ロージー・マッコール

「パリ協定」離脱を宣言して得意満面のトランプ米大統領(11月4日) Yuri Gripas/REUTERS

<各世帯ごとに、生む子供を一人減らすことを考えるところまできたと、世界の科学者1万1000人が危機を宣告>

世界153カ国の1万1000人を超える科学者が「気候の緊急事態」を訴えた。彼らが署名した論文は「気候変動による筆舌に尽くしがたい苦難」を避けるためには「根本的な変化」が必要だと警告している。

米専門誌バイオサイエンスに掲載されたこの論文によれば、1979年にジュネーブで第1回世界気候会議が開催されてから40年経った今も、事態は一向に改善していない。その間、「気候変動の危機は到来」し、その損害は予想以上に深刻であるだけでなく、進行も当初の予想以上に速い。

論文のなかでシドニー大学のトーマス・ニューサムは、科学者には人類に対する重大な脅威について一般市民に警告する「道徳的義務」があると述べている。「われわれのもとにあるデータからは、人類が気候の緊急事態に直面していることは明らかだ」

<参考記事>「気候変動が続くなら子どもは生まない」と抗議し始めた若者たち

科学者たちは1992年にも論文「世界の科学者からの人類への警告」を発表し、地球が抱える問題を訴えた。今回の論文では、その後、改善が進んだ分野をあえて取り上げている。

「オゾン層を破壊する物質の排出量が急激に減少したことは、断固たる行動をとれば事態は改善できることを示している。極度の貧困と飢饉を減らす取り組みも前進した」と、オレゴン州立大学の著名な生態学者であるウィリアム・リップル教授は本誌に語った。

前向きな変化は限定的

再生可能エネルギー部門の急速な成長、世界の出生率の低下、ブラジルの熱帯雨林の消失に歯止めがかかったことなども、前向きな変化の例として触れている。

しかし、こうした進歩はいくつかの点で行き詰まりを見せている。21世紀に入ってから、出生率の低下は鈍化し、1992年以降、世界の人口は20億人増えた(35%の増加に相当)。ブラジルは環境保護政策を覆し、アマゾンの熱帯雨林の破壊が進んでいる。

同時に、化石燃料の需要は畜産物の消費増とともに急増し、地球の温度、海面水位、海洋酸性度は上昇し続けている。太陽エネルギーと風力エネルギーの消費量は10年ごとに約373%増加しているが、化石燃料の消費量(2018年の時点で28倍)に比べればごくわずかだ。

<参考記事>フェイクニュース? アマゾン火災をブラジルが放置する理由

「状況は悪いが、完全に絶望的というわけではない」と、ニューサムは言う。「人類は気候の緊急事態に対処するための措置を講じることができる」

科学者たちは、早急な対応が必要な6つの重点分野を挙げた。化石燃料からの脱却とカーボンプライシング(炭素価格付け)の導入、食品廃棄物と動物性食品の削減、それによって農業が地球に与えているストレスを軽減すること、などの提言が含まれる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾閣僚、「中国は武力行使を準備」 陥落すればアジ

ワールド

米控訴裁、中南米4カ国からの移民の保護取り消しを支

ワールド

アングル:米保守派カーク氏殺害の疑い ユタ州在住の

ワールド

米トランプ政権、子ども死亡25例を「新型コロナワク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 8
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中