最新記事

香港デモ

香港デモ、警官発砲で1人重体か 全土に混乱広がる

2019年11月11日(月)15時14分

香港のメディアが伝えたところによると、香港で警官がデモ隊に実弾を発砲し、1人が重体になった。写真は発砲直後とされる映像より。ARIRANG NEWS / YouTube

香港で11日、警官がデモ隊に実弾を発砲し、1人が負傷した。病院関係者によると負傷者は重体。香港で続く抗議デモは24週間目に突入したが、平日の勤務時間帯に暴力行為が起きるのはまれ。

抗議デモは先週末にも各地で行われ、警官とデモ隊が激しく衝突し、混乱が広がっている。

林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は声明で、「暴力のエスカレートによって香港政府がいわゆる政治的要求を受け入れる圧力に屈するという希望的観測をまだ持っているなら、この声明ではっきりさせる。そうしたことは起こらない」と強調。「暴力行為は民主主義の要求をはるかに超えており、デモ参加者は今や人民の敵だ」と非難した。

警察は香港島東部の西湾河(サイワンホー)でデモ隊に至近距離で実弾を発砲。1人が負傷したと発表した。また、別の2つの地区で警官が銃を抜いたと明らかにした。

ビデオ映像には、抗議活動者が倒れている様子が映し出されており、流血しているもよう。警察は催涙スプレーを発射し、近くの女性を抑えつけている。警官にはプラスチック製の箱が投げつけられている。

警察は声明で、過激なデモ隊が香港全域の複数の場所でバリケードを築いていると指摘し、デモ隊に「違法な行為を即座にやめる」よう警告した。

警察は8月、威嚇のため空に向けて初めて実弾を発砲。その後、10月には18歳と14歳のデモ参加者に実弾を発砲し、負傷させている。

また警察は11日、ビジネス街の中環(セントラル)で催涙ガスを発射した。一部のデモ参加者は道路を封鎖し、昼休み中の会社員らは歩道に集まり反政府的な言葉を浴びせた。通行人の中には催涙ガスを避けようと、近くの商業施設に駆け込む人もいた。

香港ではほぼ毎日抗議デモが起き、ビジネスに悪影響を与え、政府への圧力が高まっている。しかし銀行の本店やブランド店などが集中する中環で、平日の勤務時間帯に催涙ガスが使用されることはめったにない。

西湾河に住む36歳の住民によると、抗議活動者がゴミを投げて道路を封鎖しようとしていたところに警官が駆けつけ、直接発砲した。「パン、パン、パンという音が3回聞こえた」という。

このほか、インターネット上で拡散している動画では、新界地区の商業施設「馬鞍山広場」の周辺とみられる場所で、男が別の人物にガソリンを浴びせ、火をつけている様子が映っている。この人物はシャツを引き裂き火を消すことができた。ロイターはこの映像の真偽を確認できていない。

病院管理局によると、男性1人が重度のやけどで搬送され、重体だという。また、西湾河で負傷したとみられる21歳の男性が病院に運び込まれ、手術を受けている。

警察の実弾発砲の情報が伝わると、複数の大学のキャンパスで学生、デモ隊、警察の間で衝突が起きた。目撃者が明らかにした。

香港中文大学では学生が火炎瓶を投げ付けバリケードを築き、警察は催涙ガスを使用した。香港理工大学では学生ががれきに放火した。

この日香港では、駅やショッピングセンターの近くには機動隊が配備されており、地下鉄など一部の交通機関は早朝から運行に影響が出ている。抗議活動者はバリケードを使って香港全土で道路を封鎖している。

週末の抗議活動では一部のデモ参加者が暴徒化し、新界地区や九竜地区で道路を封鎖したり飲食店を破壊したりしたため、警察隊が催涙弾を発射して強制排除に乗り出した。

*内容を追加しました。

[香港 11日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



香港島東部の西湾河(サイワンホー)での警官による実弾発砲で負傷したとみられる21歳の男性 ARIRANG NEWS / YouTube


20191119issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月19日号(11月12日発売)は「世界を操る政策集団 シンクタンク大研究」特集。政治・経済を動かすブレーンか、「頭でっかちのお飾り」か。シンクタンクの機能と実力を徹底検証し、米主要シンクタンクの人脈・金脈を明かす。地域別・分野別のシンクタンク・ランキングも。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

外相と協力して日米関税合意の実施に取り組む=赤沢経

ワールド

クリントン元大統領の証言調整、エプスタイン氏との関

ワールド

焦点:トルコのエルドアン大統領、ガザ停戦合意仲介で

ワールド

米政権、貿易相手国の薬価設定巡り新たな調査計画 F
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 5
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中