最新記事

渡り鳥

渡り鳥調査で研究者に高額の通信料金請求!

Migrating Eagles Run Up Huge Cell Phone Bill for Russian Researchers

2019年10月29日(火)16時45分
K・ソア・ジェンセン

かつてはロシアからアフリカ大陸まで生息していたソウゲンワシ NickBiemans/iStock.

<渡り鳥の飛行ルートがほぼリアルタイムでわかる便利な時代、ただし鳥がイランに飛んでしまったらおしまいだ>

ロシアの研究チームが、SMS(ショートメール)を送信できるGPSを使って渡り鳥のソウゲンワシが飛ぶコースを追跡調査していたところ、データ通信料がとんでもなく高額になってしまった。ソウゲンワシが、ローミング料が高額のイランに入ってしまったためだ。

科学系ニュースサイトPhys.orgによると、ロシア猛禽類研究保護ネットワーク(RRRCN)は、絶滅危惧種のソウゲンワシを含むさまざまな鳥たちの飛行経路と生息地を追跡調査している。鳥の背中に付ける太陽光パネル付きのGPS装置はごく軽量で、座標記録を保存できる。そして、移動通信ネットワークに接続できる場所に来たときに、そのデータをSMSで送信してくる仕組みだ。


この方法だと、調査対象の鳥を再捕獲しなくても、データを分析することが可能になる。RRRCNは集めた情報をもとに、ワシの通り道には危険な送電線などの設置を止めるよう助言するなど、人間による悪影響を減らしている。

<参考記事>地球温暖化で鳥類「血の抗争」が始まった──敵を殺し脳を食べる行動も

座標を知らせるSMSの通信料は、通常1件につき3~23セントだ。追跡中は、鳥1羽から1日4件のメッセージが送られてくる。ところがこの夏、1羽のソウゲンワシが、研究予算をほぼ使い果たすほどの通信料を使ってしまった。

出生地であるロシアの都市ミヌシンスクにちなんで「ミン(Min)」と名づけられたこのソウゲンワシは、1年の大半を、通信サービスエリア外のカザフスタン西部に飛んで連絡が途絶えた。その後、ミンはイランに移動した。

map.jpg

サウジアラビアで越冬して

イランに着くと、それまで蓄積されていたGPSデータがものすごいペースで送られてきた。不運にも、イランではメッセージを1件送信するたび通信料が77セントもかかるのだった。通信料金は、借金をしなければならないほどに膨らんだ。

研究チームはネットを通じて寄付を募ることに成功した。ミンはその後、通信料がずっと安いサウジアラビアへ移動したようだ。鳥たちが今の場所で越冬しれくれれば、年末までの通信料は賄えるという。

<参考記事>飼い主を殺害!「世界で最も危険な鳥」

ソウゲンワシは、国際自然保護連合(IUCN)が作成した「レッドリスト」に入っており、絶滅危機にあるとされている。調査によると生息数は減少しており、成鳥の数は世界全体で7万5000羽に満たない。

ピーク時のソウゲンワシは、モンゴルからロシア、南はモザンビークに至る地域に生息していた。カザフスタンとエジプトの旗にはソウゲンワシが描かれている。

(翻訳:ガリレオ)

20191105issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

10月29日発売号は「山本太郎現象」特集。ポピュリズムの具現者か民主主義の救世主か。森達也(作家、映画監督)が執筆、独占インタビューも加え、日本政界を席巻する異端児の真相に迫ります。新連載も続々スタート!

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪首相、12日から訪中 中国はFTA見直しに言及

ビジネス

ドイツ輸出、5月は予想以上の減少 米国向けが2カ月

ビジネス

旧村上ファンド系、フジ・メディアHD株を買い増し 

ワールド

赤沢再生相、米商務長官と電話協議 「自動車合意なけ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 5
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    米テキサス州洪水「大規模災害宣言」...被害の陰に「…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    中国は台湾侵攻でロシアと連携する。習の一声でプー…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中