最新記事

香港

中国、対米報復を誓う 米下院「香港人権法案」可決に激怒

China Vows to Retaliate Against U.S. for Hong Kong Human Rights Bill

2019年10月17日(木)15時00分
デービッド・ブレナン

米議会に「香港人権法案」の可決を求める香港のデモ(9月8日) Tyrone Siu-REUTERS

<中国政府はデモ参加者を「暴徒」や「テロリスト」と呼び、これは人権問題ではなくアメリカの「内政干渉」だと猛反発>

米下院で10月15日、香港での人権尊重と民主主義の確立を支援する「香港人権・民主主義法案」が全会一致で可決された。これに激怒した中国政府は、報復を宣言した。

超党派の支持を得た同法案は米大統領に対し、香港で自治権の侵害や人権弾圧に関わったとみなされる人物に制裁を科すよう求めている。また米国務省に対しても、貿易上の優遇措置を継続するかどうかを判断する上で、香港で人権と法の秩序が尊重されているかを毎年検証するよう求めている。

BBCによれば、同法案は発声投票で可決された。これは賛否が明らかな場合に用いられる投票方法。香港警察がデモ隊に向けて使う可能性のある催涙ガスやゴム弾など殺傷力の弱い武器の輸出を禁じる「香港保護法案 Protect Hong Kong Act」も可決された。

法案は今後、上院の採決とドナルド・トランプ大統領の署名を経て成立するが、下院が全会一致で可決したことは外交的圧力になる。

中国は香港人権・民主主義法案について、受け入れがたい内政干渉だと猛反発した。法案の可決を受けて中国外務省の耿爽副報道局長は16日、「米下院でいわゆる香港人権・民主主義法案が可決されたことに、強い憤りと断固たる反対を表明する」と声明を出し、報復措置を取る考えを明らかにした。

無視され続けたデモ隊の要求

耿爽はさらに「香港の現在の状況は、人権や民主主義とは関係のない問題だ」と主張。「真に重要なのは今すぐ暴力を終結させて秩序を回復し、法の秩序を守ることだ」と述べた。

香港では6月から毎週末、大規模な抗議デモが展開されている。きっかけは、中国本土への容疑者の引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案だった。反対派は、同改正案によって「一国二制度」の下で香港に認められている自治が損なわれることを恐れ、中国による(香港在住の)反体制派の迫害に道を開くことにもなると主張した。

しかし香港政府がなかなか同改正案を撤回せず、警察がデモ隊に暴力的な対応を取ったことで、香港政府や中国政府に対する不満の声はますます高まり、デモは激化の一途をたどっている。デモ隊の要求も、逃亡犯条例改正案の全面撤回を含む「5大要求」に拡大した。

林鄭月娥行政長官は、最終的に同改正案の撤回を表明。だが残り4つの「警察の暴力に関する独立調査委員会の設置」、「身柄を拘束されたデモ参加者の釈放」、「デモを『暴動』とした認定の取り消し」「普通選挙の実現」については、応じない姿勢だ。

<参考記事> 香港対応に見る習近平政権のだらしなさ
<参考記事>香港人は「香港民族」、それでも共産党がこの都市国家を殺せない理由

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で

ビジネス

NY外為市場=円急伸、財務相が介入示唆 NY連銀総

ワールド

トランプ氏、マムダニ次期NY市長と初会談 「多くの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中