最新記事

香港デモ

香港当局、覆面禁止法を5日から導入 デモ隊との緊張高まるリスクも

2019年10月4日(金)18時30分

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、緊急時に行政長官が公共の利益のために必要な規制を制定できる「緊急状況規則条例(緊急条例)」を適用し、デモ参加者がマスクなどで顔全体を覆うことを禁止する「覆面禁止法」を5日から導入すると表明した。写真は香港で1日撮影(2019年 ロイター/Athit Perawongmetha)

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は4日、緊急時に行政長官が公共の利益のために必要な規制を制定できる「緊急状況規則条例(緊急条例)」を適用し、デモ参加者がマスクなどで顔全体を覆うことを禁止する「覆面禁止法」を5日から導入すると表明した。

緊急条例が適用されるのは、香港返還後、初めて。香港政府の発表を受けて国連は、新たな措置は法に基づき、集会の自由を守るものでなくてはならないと指摘した。

ラム長官は会見で、マスクなどの着用が、デモ参加者の抑制のきかない行動につながっていると指摘。「われわれは、既存の規制を使わず、暴力がエスカレートするにまかせ、引き続き事態を悪化させるわけにはいかない」と述べた。デモ参加者の多くは、身元が割れないようマスクなどを着用している。

中国建国70周年の1日は、デモが激化し、警察が実弾を発砲。18歳の男性が至近距離で撃たれた。

ラム長官は、現在の香港は深刻な危機にあるが非常事態ではないとの認識も示した。

香港政府が、覆面禁止法でどのように取り締まっていくかは不透明。2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行をきっかけに、香港市民の多くが感染予防のためマスクをしている。

ラム長官は、マスクの着用が必要な人々には、覆面禁止法の適用が除外される見込みを示した。

緊急条例のもとで行政長官は、夜間外出禁止令やメディアの検閲、港湾や輸送の管理も実施できる。ただラム長官は会見では、マスク着用の禁止のほかにとり得る措置は明らかにしなかった。

今回の措置は、抗議活動を抑制するどころが、かえって緊張を高めるリスクをはらむ。

すでに香港警察は武力行使に関するガイドラインを緩和していたことが、ロイターが入手した文書で判明している。緊急条例の適用は裏目に出る可能性があると一部アナリストは懸念する。

ISSリスクの政治リスク・分析責任者のフィル・ハインズ氏は「次は、区議会(地方議会)選挙で一部候補者の出馬を禁止することが考えられる」と指摘した。

政府の発表に、民主派は反発したが、観光や小売に深刻な影響を受けている財界からは「暴力を終わらせるには、思い切った措置が必要」などと賛同する声があがっている。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報道官は4日の会見で、香港政府の発表について、デモに対処するための新たな措置は法に基づき、集会の自由が守られるべきと指摘。

いかなる武力の行使も例外的措置であるべきで、必要性・均衡性の原則などの国際法に則ったものでなくてはならないと述べた。

*内容を追加しました。

[香港 4日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20191008issue_cover200.jpg
※10月8日号(10月1日発売)は、「消費増税からマネーを守る 経済超入門」特集。消費税率アップで経済は悪化する? 年金減額で未来の暮らしはどうなる? 賃貸、分譲、戸建て......住宅に正解はある? 投資はそもそも万人がすべきもの? キャッシュレスはどう利用するのが正しい? 増税の今だからこそ知っておきたい経済知識を得られる特集です。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゲイツ氏、45年までにほぼ全資産2000億ドル寄付

ビジネス

三菱重の今期、ガスタービンや防衛好調で最高益に 受

ワールド

ガザ南部ラファ近郊で「激戦」とハマス、イスラエル兵

ワールド

トランプ政権、南ア白人の難民受け入れへ 来週にも=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中