最新記事

日本社会

規制改革の大本命「スーパーシティ構想」で、日本の遅れを取り戻せ

2019年9月6日(金)18時50分
清水 仁志(ニッセイ基礎研究所)

最先端技術を駆使して都市作りを進める世界のスピードに日本はついていけるか metamorworks-iStock

<キャッシュレス決済、自動運転、ドローン開発、遠隔医療などの最先端技術を一カ所で実現するスーパーシティは成長の起爆剤になる>

国家戦略特区の進化系ともいえるスーパーシティ構想(国家戦略特区法改正案)は、今年の通常国会において閣議決定まで持ち込まれたものの、会期末までの成立には間に合わず、廃案となった。秋の臨時国会で再び成立を目指す予定とされている。本稿では、成長戦略の肝となるスーパーシティ構想について、現行の国家戦略特区との違い、政策の意図、そして今後の課題について説明する。

未来社会を実現するスーパーシティ構想

スーパーシティ構想とは

「スーパーシティ」は、最先端技術を活用し、第四次産業革命後に、国民が住みたいと思う、より良い未来社会を包括的に先行実現するショーケースを目指す1。具体的には、2030年頃の未来社会を加速実現し、域内ではキャッシュレス限定や、自動運転、ドローン配達、遠隔医療を可能にするなど、生活全般にまたがり最先端技術を導入することが想定されている。

現行の国家戦略特区とは何が違うのか

現行の国家戦略特区(以下、特区)は、地域や分野を限定することで、大胆な規制緩和、制度改革や税制優遇を行う制度だ2。現在は10区域が特区として指定され、地域ごとに抱える個別の課題や、国として推進したい特定の分野に特化した街づくりを進める。特区を活用した事業計画実現のために乗り越えなければならない規制は複数あり、また、それぞれの規制を所管する省庁もばらばらだ。それらの規制に対して、個別に規制所管省と協議し、ひとつずつ事前にどの箇所の規制適用を除外するのかを明確にしなければならない。

一方で、スーパーシティ構想は、丸ごと未来都市を作ろうというものである。この構想では、現行の特区のように特定の事業領域(例えば自動運転)に限らない。AIなどの最先端技術を活用するものであれば、それに関連する全ての事業を包括的に推進するもので、その事業領域は現行の特区に比べて多岐に渡る。これを現行制度の下でやろうとすると、個々の規制ごとに協議を進めなければならず、規制特例を設けるだけで相当な時間を要してしまう。国家戦略特区法改正案は、弊害となる複数の規制について、一括して迅速に規制緩和をすることが出来るように改めるものである(図表)。

NISSEI190905_figure1.jpg

――――――――
1 「スーパーシティ」構想の実現に向けた有識者懇談会「『スーパーシティ』構想の実現に向けて(最終報告)」
2 内閣府HP

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米消費者、42%が感謝祭にクレカ利用予定 前年から

ビジネス

ドイツ経済、第4四半期は緩やかに成長 サービス主導

ワールド

資産差し押さえならベルギーとユーロクリアに法的措置

ワールド

和平計画、ウクライナと欧州が関与すべきとEU外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中