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香港最高裁・裁判官17人中15人が外国人──逃亡犯条例改正案最大の原因

2019年9月24日(火)16時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

しかし、これが本当なら、たとえば「中国(大陸)人が大陸で罪を犯して香港に逃亡した場合、あるいは香港人が大陸に行って大陸で罪を犯した場合にのみ、中国政府が香港政府に容疑者を引き渡してくれと頼むことが可能になる」という論理になり、なぜ香港の若者が抗議活動を行うのかという因果関係が見えてこない。香港人は大陸に行かなければいいわけで、ここまで大規模の長期間にわたるデモを展開する必要はなかっただろう。

しかし実際には最多で200万人に至るほどの香港人が抗議デモに参加したということは、「これが本当の原因ではない」ことを証明しているのである。

なぜ外国人裁判官を中国は認めたのか?

なぜ裁判官のほとんどが外国人(外国籍)などということが存在するのかを考えてみたい。

アヘン戦争後の1841年からイギリスによって統治されてきた香港の司法は、大英帝国とその植民地国の裁判官によって占められていた。

1980年代初期、イギリスのサッチャー元首相とトウ小平との間で香港の中国返還へのさまざまなやり取りが成されたのだが、1984年に「中英連合声明」が出された。そこでは香港に外国籍裁判官を置くことが認められている。香港特別行政区の憲法であるような「香港特別行政区基本法」は、この声明を尊重し、基本法では外国籍裁判官を置くことを認めることになった(基本法82条、90条および92条などに関連項目)。但し、最高裁の裁判長だけは中国香港籍でなければならない。

なぜ中国がこれを認めたかと言うと、当時中国大陸の方はまだまだ未発展で、香港は輝かしい国際都市だった。だから外資を呼び込み世界の金融センターとしての役割を果たすために、外国企業との間で訴訟が起きた時の裁判は外国人の方が何かといいかもしれないという計算が働き、イギリス側の主張を呑んだのだった。

基本法を改正してしまえばいいが、そのようなことをすれば、中国は法治国家ではないとして諸外国からも糾弾され、「一国二制度」の約束が完全に崩れる。

1997年から発効した一国二制度は、50年間は不変で、50年間、香港の自治を守ると謳っている。これは中国一国で決められることではなく、香港を中国に返還したイギリスとの約束であり、かつ国際金融都市としての関係国との暗黙の了解でもある。だからこそ世界の金融センターとして世界は香港に投資し、中国は香港を通して儲かってきた。

しかし中国に対する香港のその役割はもう終わった。

そこで逃亡犯条例を改正すれば、少しでも早く、そして少しでも多くの民主活動家の芽を摘み取ることができる。

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