最新記事

香港

香港最高裁・裁判官17人中15人が外国人──逃亡犯条例改正案最大の原因

2019年9月24日(火)16時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

そこで、逃亡犯条例を改正して、香港の民主活動家を大陸(北京政府側)の司法で裁けるようにしようと考えた。

いやいや、逃亡犯条例というのは「香港以外の国や地域などで罪を犯した容疑者が香港に逃げて来た時、容疑者引き渡し協定を結んだ国や地域からの要請があれば容疑者を引き渡す」ことを規定した条例で、これまではその国・地域の中に「中国大陸=北京政府(中華人民共和国)」が入っていなかったので、「改正案」で「中国大陸を含める」ことにしようとしたものだ。決して香港市民が香港で行う民主運動に参加した人を対象とすることはできないと、反論なさる方もおられるだろう。

香港政府の説明と実態

その通りだ。

そう思わせてしまうのが北京政府の戦略の危険な深さなのである。

もし額面通りの解釈が本当なら、なぜ香港の若者たちは、あんなに激しく反対したのだろうか?

2014年の雨傘運動の時に、香港を管轄する全人代(全国人民代表大会)常務委員会は何と言ったのかを思い出してみよう。

当該委員会は次のように言ったのである。

──「一国二制度」は、「二制度」の前に「一国」という文字がある。「一国」が「二制度」より優先されるのだ。したがって香港は母なる国「中華人民共和国」の憲法に従わなければならない。

すごい論理だ。

かくして「一人一票」の「普通選挙」は中華人民共和国憲法に従い、「中国を愛する人」によって構成されなければならないということになり、親中の選挙委員1200人が行政長官を選ぶことになった。

いやいや、改正案のきっかけとなったのは2018年2月に香港人が台湾旅行中に殺人を犯したからだ、という声が聞こえそうである。2人の若い男女(香港人)が台湾に旅行したのだが、女性が他の男性の子供を身籠ったことに激怒した男性が女性を殺害して台湾に遺棄したまま香港に帰国(逃亡)。後に犯罪がばれて逮捕されたが、犯罪が起きた地点が香港でないことから香港の司法では裁けない。しかし台湾と香港の間には容疑者引き渡し協定がないので台湾にも容疑者を渡せるよう、条例を改正して引き渡せる国・地域を「中国大陸、台湾およびマカオなど」に増やそうというのがきっかけだと香港政府は説明している。

これも、その通りだ。

香港政府は、たしかに、そのように説明している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中