最新記事

アメリカ社会

今年の大卒は安定第一? それでもジェネレーションZが秘める大きな可能性

GENERATION Z GETS TO WORK

2019年7月25日(木)12時02分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

そういう親に育てられたZ世代は、ミレニアル世代と違って大人を信用せず、未来は万事OKだとも思っていない。ビショップによれば、Z世代に彼らの不安や用心深さの理由を問うと、こんな答えが返ってくるそうだ。だって親から夢や希望を吹き込まれたミレニアル世代の人たちが経済の現実に振り回されるのを見てきたから、と。

冒頭で紹介したバウダーズも、進学や就職の際にはネットで読むミレニアル世代の厳しい生活の話を参考にしたと言う。「何の計画もなく大学に入り、何のスキルもなしに就職活動をしていたら、今も親元に住んで、スーパーで働いていただろう」

ミレニアル世代への大打撃

今は経済が好調だから大げさに聞こえるかもしれない。しかしわずか2年前には、決して的外れな心配ではなかった。ミレニアル世代の多くは、不況の真っただ中で働き口を探していた。「ミレニアル世代の自立が遅れたことは、長期的にアメリカ社会の変動要因になるだろう」。今年1月、ピュー・リサーチセンターのマイケル・ディモック所長はそう書いている。

ZSD201907243.jpg

Z世代は2007年のサブプライムローン危機も目撃した MARK AVERYーREUTERS


ディモックは12年の報告で、サブプライムローンのバブルがはじけた後にミレニアル世代が受けた影響の深刻さを示している。当時、18〜24歳の若者で仕事に就いているのは54%にすぎなかった(統計の残る限りで最低レベル)。仕事があっても、過去4年間でどの年齢集団に比べても週給の減額幅が大きかった。調査対象のミレニアル世代の約半数は望まない職に就き、3分の1以上はスキルを身に付けるために学校に戻り、4分の1は親の家で暮らしていると答えていた。

「経済状況のせいで彼らは人生の選択肢や将来の収入、社会人としての成長を阻害された。次の世代は別な道を選ぶだろう」。彼はそう書いていた。

08年の金融危機と不景気のおかげで「世の中、万事うまくいくとは限らない」という「健全かつ悲観的な見方」が身に付いた。そう言ったのはオハイオ州立大学を卒業したばかりのカイル・レスコーゼク。当時10歳くらいだった彼は、ファイナンシャルアドバイザーの父が眠れぬ夜を過ごし、常にイライラしていたのを覚えている。

だから、大学に入る前から進路は決めていた。オハイオ州立大学を選んだのは、総合履修プログラムでビジネスと工学の両方を学べたから。1年半前からIT系新興企業でインターンをしており、そのまま就職する予定だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪就業者数、8月は5400人減に反転 失業率4.2

ビジネス

イーライリリー経口肥満症薬、ノボ競合薬との比較試験

ワールド

トランプ氏、反ファシスト運動「アンティファ」をテロ

ビジネス

機械受注7月は4.6%減、2カ月ぶりマイナス 基調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中