最新記事

アメリカ政治

アメリカ初の軍事パレードはトランプ再選に向けた大がかりな選挙集会──独立記念日

What if Trump Turns July 4 Parade into Campaign Rally?

2019年7月4日(木)18時10分
ジェシカ・クウォン

フランスの革命記念日にパリで行われた軍事パレード。マクロン仏大統領と共にこれを見たトランプは「ぜひアメリカでも!」と誓った Joshua Roberts-REUTERS

<戦車を展示し戦闘機の実演飛行も予定される式典を再選のために利用するトランプが、わざわざ武力を誇示しないという超大国アメリカの伝統的な矜持をぶち壊しにする>

ドナルド・トランプ米大統領発案の軍事パレードが、7月4日の独立記念日(日本時間の5日)に首都ワシントンのリンカーン記念堂で行われる。

「アメリカに敬礼を(Salute to America)」と銘打ったこのイベントには、ナショナル・モール(リンカーン・メモリアル前の広場)での戦車の展示や戦闘機の実演飛行などがあり、リンカーン・メモリアルとポトマック公園では花火が打ち上げられる。トランプも演説する。超党派の独立記念日に大統領が演説をするのは異例だ。

ワシントンに到着した戦車や当日飛んでくる予定の軍用機のリストを見る


アメリカでは初の本格的な軍事パレードになる予定だが、トランプは支持者にプレミアム観覧席のチケットを配布するなど、再選のための選挙活動に利用しようとしていることがわかった。入場料無料の公的イベントで、トランプの支持者がVIP席を埋め尽くす可能性について、多くの倫理・法律の専門家から懸念の声が上がっている。

オバマ政権下で連邦職員管理局倫理部の部長を務めたウォルター・ショーブはツイッターで米議会にこう呼びかけた。「トランプは自陣営に多額の献金をした支持者へのご褒美として、国民の血税で行われるイベントのVIP席のチケットを(共和党全国委員会を通じて)配布しようとしている。きみたちは、こんなことを許すのか? 政治家が再選に向けた資金調達に軍隊を利用する。アメリカはそんな国に成り下がったのか」

<参考記事>トランプは軍事パレードより、4万人の飢えた退役軍人に食事を

再選しか頭にないトランプ

これでは、イベントに参加する兵士まで米軍の倫理規程違反に問われることになると、米海軍予備役将校でジャーナリストのジョシュ・キャンベルは指摘し、国防総省の倫理指針に記載された「禁止された政治活動(セクション4.1.2)」のスクリーンショットをツイッターに投稿した。

「米軍の現役兵士は、1.政党の資金調達活動、集会、党大会、選挙活動の運営、討論会に参加してはならない。これは軍服の着用いかんにかかわず、兵士であることが推測できるか否かにもかかわらない」

トランプが、党派を超えた厳粛な式典で政敵を攻撃し、自分の実績を強調するのはこれが初めてではない。6月初めにはフランスでノルマンディー上陸作戦75周年記念式典に参列。FOXニュースのインタビューに応え、作戦で戦没した米兵が眠る墓地を背景に、ライバル民主党のナンシー・ペロシ下院議長とロシア疑惑を追及したロバート・モラー特別検察官をあしざまにののしった。

<参考記事>トランプをパリに招いたマクロン「おもてなし」外交のしたたかさ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT

ワールド

トランプ氏「ウクライナはモスクワ攻撃すべきでない」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中