最新記事

日本社会

地方組織が人手不足に陥る理由 「4つの矛盾」が優秀人材を辞めさせる

2019年7月4日(木)16時30分
木下 斉 (まちビジネス事業家) *東洋経済オンラインから転載

4つの矛盾だらけの話とは、どんなことでしょうか。それは以下のことです。


1. いい人材がほしいけど、給料はあまりあげたくない
2. 終身雇用はしないけど、会社には忠実でいてほしい
3. 即戦力になってほしいけど、教育投資はやりたくない
4. 積極性がほしいけど、自分には従順に従ってほしい

まず1. ですが、いい人材が欲しければ、権限と報酬を与えることは当たり前です。次に2. は、従来ならば終身雇用という安定性を担保していたからこそ、会社組織に忠実であることを要求できたのであって、雇用が不安定なのに忠実に働くことまで求めることは難しいわけです。

3. は、もし即戦力になってほしいのであれば、より優れた技術や経験を積める研修投資をしなくてはならないのに、「それは個々人でやってね」などと言って、できればおいしいところだけ組織で刈り取りたいということを平気で考えます。

最後の4. ですが、「これから必要なのは、イノベーションだ! 従来と違う画期的な発想を持って行動する積極的な人材がほしい」などと理想を並べておきながら、なんのことはない「自分に逆らうような人は駄目だ」というような具合です。

仕事ができる若い人ほど、辞めていく

冗談のようではありますが、実際に起きていることです。地方に人が来ないのは、確かに生産年齢人口の減少のようなマクロ要因もありますが、私に言わせれば、当事者側の組織問題のほうが大きいのでは、と思うところです。

その結果として、市役所などの行政側からは、仕事のできる若手公務員ほど、独立したり転職する人が増加していたり、都市部へより条件のいい教育や就労機会を目指して出ていったりするわけです。そのほうが合理的だから当然のことでもあります。

以前から地方の会議や、国の経営者が集まる会議で「もっと若者や女性の視点で改善しないと、ますます人が来なくなりますよ」と言っても、「そもそも最近の若い世代は苦労をしようとしない」といったような話で経営者たちが盛り上がってしまい、「ウチなんかこんなに人が来なくて大変なんだ」といった、訳のわからない苦労話に花が咲いて終わってしまいます。

しかも、最後は「外国人労働者を入れていこう」と安い労働力を導入することで、問題を先送りするということも少なくありません。抜本的に仕事を変えたり、人事制度を変更するよりも、はるかに簡単だからです。しかし、これまでやってきた仕組みをまったく変えずに温存しながら、仕事の引き受け手を探し続ける企業の将来の将来性はあるのか、甚だ疑問です。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米財務省、今後数四半期の国債発行額据え置きへ ガイ

ビジネス

ノバルティス、米レグラスを最大17億ドルで買収へ 

ワールド

原油先物小幅に上昇、サウジの増産観測で前日は急落

ワールド

カナダ、ウクライナ支援継続を強調 両首脳が電話会談
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 3
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中