最新記事

インド

女の子が生まれない村 216人全員が男の子って?

Probe Launched After No Girls Among 216 Babies Born in Indian District

2019年7月23日(火)17時30分
ブレンダン・コール

インド政府の昨年の報告書は、インドの人口から6300万人の女性が「消えて」いると明かした Pawan Kumar-REUTERS

<働き手にならない女の子を堕胎してしまう貧しさゆえの悪習を、インド政府は根絶しようとしてきたのだが>

インド北部のある地区で、過去3カ月に生まれた赤ちゃんの中に女の子が一人もいなかったことが分かり、当局が理由を調べ始めた。通信社ANIによれば、北部ウッタラカンド州のアターカシー地区の132の村では、過去3カ月で216人の赤ちゃんが生まれたが、その全員が男児で女児は一人もいなかったという。

インドでは女性蔑視の考え方が根強く、生まれてくる赤ちゃんが女の子だと分かると堕胎される傾向が強い。中央政府はこの悪しき慣習を覆そうと取り組んでいるが、アターカシー地区の一件を受けて、その政策が機能していないのではないかと懸念する声が上がっている。

中央政府は1994年に、男女産み分けのための中絶を法律で禁止した。それでも、女の子が生まれれば結婚の際に高額な持参金を用意しなければならず、男の子ならば将来の稼ぎ手になるという考えから、今もそうした中絶が一般的に行われている。

<参考記事>異例の熱波と水不足が続くインドで、女性が水を飲まない理由が悲しすぎる

以前この地区では聞いたことがない

ソーシャルワーカーのカルパナ・タクールはANIに対して、今回のアターカシー地区の統計結果は、当局の対策が十分ではないことを示していると語った。「これらの村で過去3カ月、女の子が一人も生まれなかったのが単なる偶然とは思えない。このデータは、アターカシー地区で女児の堕胎が行われていることを示している。政府や当局が何もしていないことのあらわれだ」

この統計結果を受けて、同地区の医療関係者は緊急会議を開いた。ANIによれば、同地区のアシシュ・チャウハーン長官は、「何が男女比に影響を及ぼしているのかを解明するために、これらの地域を監視している。今後詳しい調査を実施して、男女比の不均衡の原因を特定するつもりだ」と語った。

ウッタラカンド州議会のゴパール・ラワット議員も、保健省に「憂慮すべき統計」の原因を調べるよう指示。英インディペンデント紙によればラワットは、「アターカシー地区の132の村で女の子が一人も生まれなかったというのは衝撃だ。この地区で女児の堕胎が行われたという話は、ほとんど聞いたことがなかった」と語った。

<参考記事>トイレ普及急ぐインド 「辱め」を受ける外で排泄する人たち

2011年度のインド国勢調査報告書は、0~6歳の子どもの男女比を1000(男の子):914(女の子)としている。だが国連人口基金(UNFPA)は、北部の一部の州では女の子の割合がもっと少なく、男女比が1000:850のところもあったと指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

逮捕されたイランのノーベル平和賞受賞者、激しい殴打

ビジネス

英財務報告評議会、EYのシェル監査を規則違反で調査

ビジネス

MUFG、インドのノンバンクに5000億円超出資へ

ビジネス

ドイツ輸出先、中国が7位に後退へ 15年ぶりトップ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中