最新記事

教育

10%の食塩水1kg作るのに必要な塩と水は? 大学生が「%」を分からない絶望的な日本

2019年5月13日(月)15時30分
芳沢 光雄 : 桜美林大学リベラルアーツ学群教授 *東洋経済オンラインからの転載

大学の授業風景。写真はイメージ 101cats / iStockPhoto


いま、「比と割合の問題」を間違える大学生が目に見えて増えている。 税込の代金が定価の1.08倍(消費税分)になることが説明できない、「2億円は50億円の何%か」が答えられない......などなど。 この問題の本質はどこにあるのか。日本の数学教育に危機感を抱いてきた桜美林大学リベラルアーツ学群教授の芳沢光雄氏が、著書『「%」が分からない大学生 日本の数学教育の致命的欠陥』を基にこれからの「学び」のあり方を問い直す。

20世紀から21世紀になって、各種経済データの見方で大きな変化があった。例えば、1万人の社員で1000億円の利益を上げる企業と、100人で100億円の利益を上げる企業を比べるようなとき、20世紀までの「足し算」から21世紀は「割り算」による「1単位当たり」の視点で考える時代になった。そこで現在においては、「%」の発想が基本になる。

「%」が理解できない大学生たち

ところが、この「%」に関して現在、大学生の理解で異変が起きている。「2億円は50億円の何%か」という質問に対して、2を50で割って正解の4%が導けない学生や、消費税込みの代金は定価の1.08倍になることの説明ができない学生が多くいる。毎年行われている全国学力テストで、それらを裏付けるものも報告されている。

たとえば2012年度の全国学力テストから加わった理科の中学分野(中学3年)で、10%の食塩水を1000グラム作るのに必要な食塩と水の質量をそれぞれ求めさせる問題が出題されたが、「食塩100グラム」「水900グラム」と正しく答えられたのは52%にすぎなかった。1983(昭和58)年に、同じ中学3年を対象にした全国規模の学力テストで、食塩水を1000グラムではなく100グラムにしたほぼ同一の問題が出題されたが、このときの正解率は70%だったのである。

ここ数年、他大学のさまざまな分野の教員から、「%」を理解していない大学生の情報が寄せられるようになった。さらに、本年2月下旬に発行された雑誌『数学文化』第31号でも思わぬ記事を見た。

小学校の元先生は、2015年度の全国学力テストの算数B(小学6年)で、正答率13%という極端に出来の悪い「%」の問題があることを指摘され、以下のことを述べられている。

「この数値は本当に大変な数値で、マスコミが取り上げないといけないと思うのですが、この数値が話題になることはついにありませんでした。もっと驚くのは教育学者や数学の専門家が何も言わなかったことです」

さらに、その先生は「中学生になって割合の学力が回復する子はそんなに多くないように思われます」と結ばれている。それに筆者が付け加えるならば、大学生になっても変わらないと述べたい。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル、交渉のための戦闘停止を拒否 レバノン政

ワールド

ロシアによるウクライナの子ども連れ去りは人道犯罪、

ワールド

米ロ・ウクライナの和平協議、トルコで来週にも開催か

ワールド

トランプ氏、イランにホルムズ海峡の機雷撤去要求 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 5
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 6
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    身長や外見も審査され、軍隊並みの訓練を受ける...中…
  • 10
    トランプも無視できない? イランで浮上した「危機管…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中